父の死、そして自動車事故から始まったミステリアスな物語。六者六様の「女たち」にも注目『唄う六人の女』

 『オー!マイキー』、『ミロクローゼ』等が話題を集めた石橋義正が、約10年ぶりに監督作品を発表した。竹野内豊と山田孝之を核に据えた、重厚かつミステリアスな一作だ。

 40年以上も会っていなかった父の訃報を聞いて、萱島(竹野内豊)は田舎にある生家に向かう。父が所有していた山を売るためだ。そしてその土地を買いに来たのが、開発業者の下請けを務める宇和島(山田孝之)という男。契約を無事に終えたふたりは、宇和島がいささか危なっかしく運転する車に乗って、都会へと戻っていくのだが、途中で事故に遭ってしまう。

 どうにか意識を取り戻したふたりだが、何かがおかしい。身動きができない。そのうち、どうやら6人の女性に監禁されていることがわかってきた。食事は与えてくれるので、自分たちを殺す気はなさそうだということは予想できたのだが、それにしても、どうして俺たちがという疑問はぬぐえず、目指すところはやはり「脱出」ということになる。女性たちは能面のような表情で、声を発さず、一様に謎めいており、一挙一動が呪術あるいは儀式のよう。萱島と宇和島の視点から見れば、非常に不気味なアクションであり存在感だったのに違いないが、スクリーンを介在してひとりの観客として物語に接した私には、この6人が非常に美しく感じられた。それぞれの目の色(カラーコンタクトを駆使しているのだろう)、服の着こなし、立ち居振る舞いなどがやけに優雅で、ニュアンスに富んだカメラ・ワークと調和している。

 この6人に扮するのは水川あさみ、アオイヤマダ、服部樹咲、萩原みのり、桃果、武田玲奈。それぞれしっかりしたポジションを持ち、皆、キャラクターが立っている。また、竹中直人も「裏の主人公」といいたくなるほど重要な役回りを演じている。なぜ二人の男が捕らわれなければならなかったのか。あの事故は起こるべくして起こったものなのだろうか、女たちは「歌う」のか。謎をはらみつつ、ストーリーは加速する。

映画『唄う六人の女』

10月27日(金)、TOHOシネマズ 日比谷 他、全国ロードショー

出演:竹野内豊 山田孝之
監督・脚本・編集:石橋義正 脚本:大谷洋介 音楽:加藤賢二 坂本秀一 制作プロダクション:クープ コンチネンタルサーカスピクチャーズ 制作協力:and pictures 配給:ナカチカピクチャーズ/パルコ 上映時間:112分 映倫指定:PG12
(C)2023「唄う六人の女」製作委員会

公式サイト
https://www.six-singing-women.jp/