「世にも奇妙な物語」のファンなら、飛びつくように画面を見ながら、ひとつひとつの「あやしいシーン」を脳に刻みこんで、巧妙なトリックに酔いつつ、しっかりと怖がるに違いない。サスペンス・ホラーなのに、どこか小気味よい。それもこのオムニバス作品の魅力であろう。香港の映画はスケール感が豊かだなあ、と強く感じさせられた。
ホイ・イップサン監督(ハリウッド作品『ダークナイト』にも関与)のエピソード1「暗い隙間」の主演は、役者のほか、歌手としていくつもの楽曲を出しているチェリー・ガン。ここでは謎の“眼”に怯える芸能人、ヤウガーを演じる。この“眼”の正体は何か、ここからもう、予想の先を行く展開が待っている。エピソード2「デッドモール」は『メイド・イン・ホンコン』で名を知らしめたフルーツ・チャンが監督。なにか勝ち誇ったように、不自然なまでの笑顔で投資案件を高らかにライブ配信する男=ヨンの“卑怯さ”、そして、かつて起こった「モールでの大火災事故」が、この物語の軸にある。
エピソード3「アパート」は、『少林サッカー』などチャウ・シンチー監督作品の脚本を務めたことで知られるフォン・チーチャンが監督。「アパートに出る幽霊を退治するのか」と思って見ていたら、伏線だらけ。個人的には、見ているうちに誰が善で誰が悪なのかだんだんわからなくなってきて、それが逆に快感だった。リッチー・レンの苦み走った演技も大きな見どころだ。12月1日よりシネマカリテほか全国順次公開。
★映画『香港怪奇物語 歪んだ三つの空間』
12月1日(金)よりシネマカリテほか全国順次公開
■監督:フルーツ・チャン、フォン・チーチャン、ホイ・イップサン ■プロデューサー:ジョン・チョン、マシュー・タン
■出演:チェリー・ガン、ン・ウィンシー、ジェリー・ラム、セシリア・ソー、リッチー・レン、ソフィー・ン ※登場順
■配給:武蔵野エンタテインメント株式会社
2021年/香港/広東語・北京語/112分/シネマスコープ/5.1ch/原題:失衡凶間/英題:Tales from the Occult/日本語字幕:鈴木真理子/G
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