父を失い、パリに到着した17歳の少年が感じたものとは……。クリストフ・オノレ監督の自叙伝的一作『Winter boy』

 『愛のうた、パリ』、『愛のあしあと』等で知られる映画監督・作家のクリストフ・オノレ(1970年生まれ)の、半ば自叙伝的な一作。ストーリーの随所で、主人公・リュカのモノローグが挿入される。

 オノレは15歳の時に父親を亡くしたそうだが、この映画の主人公であるリュカは17歳の時に父親を事故で失った。葬儀の後、リュカは兄・カンタンと共に、兄の住むパリに向かう。兄はリリオと名乗るアーティストと部屋をシェアしていた。親身に接してくれるリリオに恋心を抱くリュカだが、リリオにとってリュカは「ついこの前、知り合った同居人の弟」である。3人の男たちの、近いんだかそうでないのかわからない距離感にハラハラさせられ、恋の苦しさをにじませながら葛藤し、自暴自棄となるリュカに「どうにかこれを乗り越えてくれ」と思いながら観た。そして観終わったあと、(あくまでもリュカの物語であるとはいえ)、己をさらけだしたオノレ監督の強力なプロフェッショナリズムを痛感した。

 リュカを演じたポール・キルシェは、『トリコロール/赤の愛』主演のイレーヌ・ジャコブを母に持つ気鋭。この映画によって、2022年サン・セバスティアン国際映画祭の主演俳優賞を受賞している。母親役は『トリコロール/青の愛』や『イングリッシュ・ペイシェント』等で賞を獲得したジュリエット・ビノシュ。

●映画『Winter boy』

12月8日(金)よりシネスイッチ銀座、新宿武蔵野館 ほか全国順次公開

監督・脚本:クリストフ・オノレ 音楽:半野喜弘
出演:ポール・キルシェ、ジュリエット・ビノシュ、ヴァンサン・ラコスト、エルヴァン・ケポア・ファレ
配給:セテラ・インターナショナル 協力:Uni France/French Film Season in Japan 2023
【原題:Le lyceen/2022年/フランス/仏語/2.39:1 /5.1ch/122分/日本語字幕:横井和子/R15+】
(C) 2022 L.F.P・Les Films Pelleas・France 2 Cinema・Auvergne-Rhone-Alpes Cinema

公式サイト
https://www.winterboy-jp.com/