映画『護られなかった者たちへ』がいよいよ公開。東日本大震災から9年後に、不可解な殺人事件が起こった。大ヒット・ミステリー小説が強力ラインナップで映画化

 中山七里のミステリー小説『護られなかった者たちへ』が、ついに映画化された。監督は瀬々敬久、脚本は林民夫と瀬々敬久、音楽は村松崇継が担当する。

 舞台は2020年、宮城県内の都市部。中年男性が全身を縛られたまま一室に放置され餓死するという事件が連続して起こった。被害者はいずれも高い地位にあり、社会的にも評判がいい。誰がこんなひどいことをしたのか。容疑者として浮かびあがったのが、ある事件の刑期を終えて出所したばかりの利根(佐藤健)だ。彼と笘篠刑事(阿部寛)のやりとりには息詰まるような緊張感がある。

 そして個人的に、この映画に途方もない深みを与えていると感じられたのが幹子(清原果耶)の役どころだ。福祉センターに務める彼女と会い、話をしているときの利根は明らかに、普段の鋭く突き刺すような視線や反抗的な態度を忘れている。ただこれは単なる恋心ではない、一種の同志愛のようなものであることが、ふたりの丁寧な演技から伝わる。容疑者と福祉センター従業員になぜ、そのようなものが生まれたのか。我々は映画を見ながら、その謎に迫ることもできる。

 まさしくネタバレ厳禁のミステリーという印象を受けたが、事前に2011年3月11日に起こった東日本大震災を振り返り、当時の報道や映像を頭の中に入れておくと、より各登場人物の「切実ぶり」がヴィヴィッドに心に入ってくるはずだ。また、清原果耶の演技は情念すら感じさせるもので、この作品と、今年3月公開の『まともじゃないのは君も一緒』をあわせて見れば、彼女が大変なポテンシャルの持ち主であり、なぜこれほどまでの売れっ子になったのかはっきりする。

映画『護られなかった者たちへ』

10月1日(金)魂が、泣く。

■出演:佐藤健 阿部寛 清原果耶 林遣都 永山瑛太 緒形直人 吉岡秀隆 倍賞美津子
■主題歌:桑田佳祐「月光の聖者達(ミスター・ムーンライト)」(タイシタレーベル/ビクターエンタテインメント)
■原作:中山七里「護られなかった者たちへ」(NHK出版)
■監督:瀬々敬久『64 ロクヨン 前編 後編』
■脚本:林民夫『永遠の0』・瀬々敬久
■音楽:村松崇継『思い出のマーニー』
■企画:アミューズ
■配給:松竹
(C)2021 映画「護られなかった者たちへ」製作委員会

公式サイト: https://movies.shochiku.co.jp/mamorare/