「愛犬の里親さがしに関するロードムービー」としても解釈できる、ユーモラスで心温まる一作『マイ・ハート・パピー』

　犬好きなら微笑まずにはいられない一作だ。いや、いのちの尊さを知る者なら、なにかしら熱いものが胸にこみあげてくるに違いない。

　主人公のミンスは、愛犬ルーニーをとことんかわいがる好青年。だが彼には結婚を考えている彼女がいる。ミンスは諸事情（これはストーリーの核のひとつなので伏せておく）によって、彼女との暮らし、もしくは犬との暮らしのひとつを選ぶ必要がある。いっぽう、同じころ、ミンスのいとこであるジングクが経済的苦境に立たされていた。意気込んでオープンしたカフェがつぶれてしまったのだ。彼もまた、大の犬好きだ。

　ミンスは結局、彼女との暮らしをとることにする。そうなるとルーニーとは一緒にいられない。愛する犬のため、できる限り良い里親を探したい。そこに協力を惜しまないのがジングクだ。ここから「里親探しのロードムービー」的な色彩が濃くなっていくのだが、あら不思議、1匹の犬の里親探しの旅のはずなのに、旅が進むごとに犬が増えていく。捨て犬をほうっておくことはできないし、殺処分の犬も助けずにはいられない。血統書付きにも雑種にもわけへだてなく接する。ユーモラスな映画だというのに、ふたりの“犬愛”が泣かせる。

　出演のユ・ヨンソク（『応答せよ1994』）とチャ・テヒョン（『猟奇的な彼女』）は約15年ぶりの共演であるという。“国民の妹”と呼ばれるキム・ユジョンもクールな令嬢役で登場する。監督・脚本はキム・ジュファン。