地球ごと太陽系から離脱させよう……。世界興行収入約6億米ドルの大ヒット中国映画『流転の地球 -太陽系脱出計画-』

 2019年に公開された『流転の地球』の、そこに至るまでの過程を描いたというべき作品。製作費は3.2億元(約65億円)、すでに世界興収は約6億米ドルに達しているそうだが、3月22日からようやく日本でも公開される。中国映画の技術とダイナミズムに刮目させられる、約3時間の長編だ。原作・製作総指揮は、リウ・ツーシン(アジア人として初のヒューゴー賞を受賞)が書いたSF小説「流浪地球(さまよえる地球)」であるという。あまりの好評に、すでに『流転の地球』第3弾の制作にも取りかかっていると伝えられる。

 いまも地球は終焉に向かって突き進んでいる予感が私にはするのだが、リウ・ツーシンが見据えているのは「太陽系消滅」の世界だ。そうなる前に、1万基に及ぶロケットエンジンを使って、地球ごと太陽系から離脱させよう……プロジェクト「移山計画」と、それに携わる人々の心模様が映画の主軸となる。が、必ず「自分だけが(自分の国だけが)助かればいい、あとは知らね」という輩がいるし、卑怯な方法で邪魔する団体もいるから、物事はストレートには進まず、外のノイズとの戦いにも力を使うことになる。

 驚くほど迫力に満ちた爆発や銃撃の音、超リアリティというべきCGの使い方にも惹かれたし、さまざまな国の、さまざまな民族の、さまざまな言語の者が一致団結する姿は「早くからこうすれば、現実の世の中ももっと良くなるはずなのに」と思わせてくれるに十分だ。妻を亡くした飛行士、亡くなった娘にデジタル技術を使って語りかける科学研究者、連合政府の中国代表、それぞれの立場と哀愁も細かく描写されているし、とある場面は「中国主導のニュー・ワールド・オーダー」を暗示しているようにも感じられた。監督グオ・ファン、出演はウー・ジン、アンディ・ラウ、リー・シュエチェン、ワン・ジー等。

映画『流転の地球 -太陽系脱出計画-』

3月22日(金)よりTOHOシネマズ 日比谷ほか全国公開

監督:グオ・ファン 製作総指揮・原作:リウ・ツーシン
出演:ウー・ジン、アンディ・ラウ、リー・シュエチェン、シャー・イー、ニン・リー、ワン・ジー、シュ・ヤンマンツー
2023年/中国/中国語・英語/173分/カラー/シネスコ/5.1ch/DCP/原題:流浪地球2/英題:THE WANDERING EARTH Ⅱ/字幕翻訳:神部明世/字幕監修:大森望/配給:ツイン
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