ボリショイ・バレエ団のプリマ・バレリーナを夢見るアメリカ人バレリーナが体験したこととは……。『JOIKA 美と狂気のバレリーナ』

 2012年にアメリカ人女性として初めてボリショイ・バレエ団とソリスト契約を結んだジョイ・ウーマックの体験に基づく一作。この「アメリカ人」というのがポイントであるように感じられる。いくらアメリカ人であろうが、地球のすべてでデカい顔ができるとは限らない。ボリショイ・バレエの世界でも中心にはいない。踊れば教師から「アメリカ人臭い」と言われる。ボリショイにアメリカン・フィーリングはいらないのだ。

 が、ジョイは努力に努力を重ね(計り知れないほどの妥協もあったろう)、ボリショイのお偉方を実力で認めさせてゆく。描かれているエピソードには、デイミアン・チャゼル監督映画『セッション(Whiplash)』にも通じるスパルタ風味を感じさせる箇所もある。教師がジョイにつけるレッスンは異様なまでに厳格なものであり、彼女を責めて責めて責めまくる。“バレエ団”というぐらいだから集団行動でもあり、そうなると「はみ出し者」がいじめにあう率は高い。自分たちの中にアメリカからやってきた「よそ者」が入ってきて、しかも相当な実力を持っていたら? そりゃあ他の生徒たちは全力で彼女をつぶしにかかるだろう。果たしてジョイは信じられないような、陰湿ないじめ(陰湿ではないいじめがあるとは思えないにしても)を受けた。日本ならトウシューズに納豆が入れられたりするのだろうが、あいにくボリショイには買い置きがなかったようで……この先については述べるのを控えるけれど、とにかくジョイは「不屈」であった。そして今に続く栄光を勝ち得た。こうなると、ジョイ・ウーマック本人の舞台をぜひ見たくなる。

 監督・脚本はジェームス・ネイピア・ロバートソン、主演はタリア・ライダー。ほかダイアン・クルーガー(ダンサーを目指していた経験がある)が鬼教師、ダンサーのオレグ・イヴェンコがジョイのパートナーであるニコライを演じる。ほか高名なバレリーナのナタリア・オシポワも本人役で登場する。

映画『JOIKA 美と狂気のバレリーナ』

4月25日(金)より TOHOシネマズ シャンテ 他全国公開

出演:タリア・ライダー ダイアン・クルーガー オレグ・イヴェンコ
監督・脚本:ジェームス・ネイピア・ロバートソン
2023/イギリス・ニュージーランド/111分/カラー/スコープ/5.1ch/原題:JOIKA/日本語字幕:古田由紀子/字幕監修:森菜穂美/配給:ショウゲート
(C) Joika NZ Limited / Madants Sp. z o.o. 2023 ALL RIGHTS RESERVED.

公式サイト
https://joika-movie.jp/