400年受け継がれる唐紙文様を起点に、「あるがままの自然」を探求する。『フィシスの波文』

 まったく馴染みのない分野だったこともあり、実に興味深く拝見した。少なくとも私は、今の今まで、「文様」に関して考えたことはなかった。

 この映画は、さまざまな「文様」に焦点をあてたドキュメンタリー作品である。400年ものあいだ、和紙に文様を手摺りするテクニックを受け継いできたという京都の工房での取材(やわらかな光を取り入れた映像もひじょうに美しい)に唸らされ、ほか、祇園祭などの動的な風景と静的な自然の対比、北海道のアイヌの文様、さらにイタリアや古代ローマにまでカメラは進む。タイトルの「フィシス」とは古代ギリシャ語で「あるがままの自然」を意味するという。「もっと自分に造詣が深ければ、より作品のコクが実感できたかも」と自身の浅さを痛感するところもあったが、観終わった後、「文様」への関心が増したのは事実だ。見る者の、新たな扉を開けうる作品であろう。

 監督・撮影・編集は茂木綾子、出演は千田堅吉(唐長十一代目 唐紙屋長右衛門)、千田郁子(唐長)、鶴岡真弓(芸術人類学者)、ピエール=アレクシィ・デュマ(エルメス アーティスティック・ディレクター)、戸村 浩(美術家)、皆川明(ミナ ペルホネン デザイナー)、門別徳司(アイヌ猟師)、貝澤貢男(アイヌ伝統工芸師)ほか。

映画『フィシスの波文』

4月6日(土)シアター・イメージフォーラムほか全国順次公開

監督・撮影・編集:茂木綾子
出演:千田堅吉(唐長十一代目 唐紙屋長右衛門)、千田郁子(唐長)、鶴岡真弓(芸術人類学者)、ピエール=アレクシィ・デュマ(エルメス アーティスティック・ディレクター)、戸村 浩(美術家)、皆川 明(ミナ ペルホネン デザイナー)、門別徳司(アイヌ猟師)、貝澤貢男(アイヌ伝統工芸師)ほか
サウンド:ウエヤマトモコ 音楽:フレッド・フリス タイトル考案:中沢新一(人類学者) 宣伝美術:須山悠里 プロデューサー:河合早苗 企画・製作・配給:SASSO CO.,LTD. 助成:文化庁文化芸術振興費補助金(映画創造活動支援事業)、独立行政法人日本芸術文化振興会
(C)2023 SASSO CO.,LTD.

公式サイト
https://physis-movie.com/