「妙にリアル」なところに惹かれてしまう。逆に言えば、「はるか遠い未来の話」という枠に収まっていない。そう考えると、1950年代や60年代前半の映画で、なかば牧歌的に描かれていたような未来や宇宙の風景は本当に「今は昔」となった。
監督・脚本・製作のフランソワ・デスクラックは2009年からこの作品を構想していたという。そしてWEBシリーズでまず注目を集めて、小説やコミックなどのメディアミックスを果たし、満を持して劇場映画の製作に移った。物語の舞台は我々のいる現在から500年以上も先の2555年。いよいよ、地球の終焉が濃厚になってきた。破滅に向かって一直線だ。だが、光明もないではない。その原因のひとつというべきある「事件」が、遠い昔の2022年に起こっている。つまり、タイムトラベルで2022年に戻って、それを阻止すれば、2556年以降も地球は保つ。
「誰かがやらねば」と意気に燃えたのか、ひとりのタイムトラベラーが2022年に飛ぶ。が、歴史というものが改変できるものではないことは、数々のタイムトラベル系作品に描かれている通りだ。この分野に数多くの作品が生まれ、愛されているのは、「改変できないもの」を「どうにか改変しようとする」登場人物の切なさにオーディエンスが共鳴しているからだと私は考えているのだが、ここではその「切なさ」に、時間警察を名乗る者の「妙な正義感」、さらに「ひねりのあるユーモア」(私は最初の十数分で5、6度吹き出した)が加わって、しかもアクション・シーンも豊富だ。
原題は「Le visiteur du futur」(未来からの訪問者)。タイムトラベラー役にはデスクラックの友人であるフローラン・ドリンが扮する。映画内で「事件」が起きた2022年という年を、我々はもう2年も過ぎてしまった。そう思いながら観ると感慨が増す。
映画『フューチャー・ウォーズ』
5月10日より、新宿バルト9ほか全国ロードショー
監督・脚本・製作:フランソワ・デスクラック
出演:アルノー・デュクレ、フローラン・ドリン、エンヤ・バルー、ラファエル・デスクラック、スリマン=バプティスト・ベルフン
2022年|フランス・ベルギー|フランス語|カラー|シネマスコープ|5.1ch|101分|レイティング:G
原題:LE VISITEUR DU FUTUR|英題:VISITOR FROM THE FUTURE|日本語字幕:井村千瑞 配給:クロックワークス
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