「好き」の力が風景を変える。人気漫画を原作にした、逸材「見上愛」の初主演映画『不死身ラヴァーズ』

 「恋に全力」とは、こういう状態をいうのだろう。しかもそれがちっともエゴイスティックでないから気持ちいい。

 原作は、高木ユーナの同名漫画。「映画化不可能ではないか」とすら言われてきた作品が、構想約10年、松居大悟監督によってついにスクリーンにかかる。基本的に「熱烈に愛する人」は長谷部りの、「愛される人」は甲野じゅんだ。りのはじゅんを「運命の人」だと思っている。その熱意に応えて、じゅんの心も動き、両想いになる。なのに、ふたりにとって、この「歓迎すべきこと」が起こると、どういうわけか、りのの前からじゅんが消えてしまうのだ。が、話はこれで終わらない。以降も、りのの人生の局面に、なんらかのかたちでじゅんが、いろんなポジションで登場するのである。りのはもちろんその都度、熱烈な「好き」を伝えるのだが、やはり両想いになった時点で、それは終わる。が、りのはあきらめない。なぜなら、じゅんは「運命の人」だからだ。

 そこに松居監督は、さらなる趣向を加えた。ねじれ、ループ、うねりがさらに深くなってゆくこと必至の味を添えた。「こんなことがあるなんて」と思いつつ、しだいに心が揺さぶられていく。「ああ、胸の奥をそっと刺してくる映画だな」と思う。りの役を演じる見上愛はこれが初主演映画だそうだが、圧倒的な存在感で、演技はもちろんギターの弾き語りにも優れ、松居監督が「この人が映画の中に存在してくれたら、自分の思っているところよりも遠くに行ける気がした」というだけのことはある逸材。りのの中学時代から大学生時代までをひとりで演じ切っている。

 じゅんを演じるのは、劇団EXILEの佐藤寛太。りののことを見守る幼なじみ・田中(本当は好きなんだろうが、「運命の人」を思う彼女のために一歩ひいているようなスタンス)には、青木柚が扮している。「実質的には彼が主役なのでは」というぐらい、物語の本筋に深くかかわっている。

映画『不死身ラヴァーズ』

5月10日(金)よりテアトル新宿ほか全国公開

<STORY>
「消えたっていいよ、私が消さないから」
長谷部りのが“運命の相手”と信じて追いかけるのは、両想いになった瞬間、この世界から忽然と消えてしてしまう甲野じゅん。二人は人生の中で何度も出逢い、その度にりのは「好き」と伝え、両想いになり、じゅんが《消える》という出来事を繰り返していく。それでも諦めないりののどこまでも真っすぐな「好き」が起こす奇跡の結末とは――。

<キャスト>
見上愛 / 佐藤寛太
落合モトキ 大関れいか 平井珠生 米良まさひろ 本折最強さとし 岩本晟夢 アダム
青木柚  前田敦子  神野三鈴

<スタッフ>
監督:松居大悟
原作:高木ユーナ『不死身ラヴァーズ』(講談社「別冊少年マガジン」所載)
脚本:大野敏哉 松居大悟
音楽:澤部 渡(スカート) 主題歌:「君はきっとずっと知らない」スカート(PONYCANYON / IRORI Records)
製作幹事:メ~テレ ポニーキャニオン
配給:ポニーキャニオン
製作プロダクション:ダブ
2024|日本|カラー|103分|5.1ch|ヨーロピアンビスタ|映倫区分:G
(C)2024「不死身ラヴァーズ」製作委員会
(C)高木ユーナ/講談社

公式サイト
https://undead-lovers.com/