サンティアゴ・バスケスに惚れた! 実話を基にした狂気のバイオレンスコメディ『キック・ミー 怒りのカンザス』

 構想10年の末に仕上がった作品だときく。このようなコンセプトを温め続けてきたゲイリー・ハギンズ監督には、「あっぱれ」というしかない。よく今まで正気を保ててこれたものだと思うし、しかも実話がベースになっているというのだから、びっくりだ。舞台となるのは、アメリカ中西部のカンザス・シティ。ここは「ミズーリ州」と「カンザス州」にまたがっていて、つまりその点、「新宿区」と「豊島区」にまたがっている高田馬場のようなものだ。そして私は確か高田馬場で会社勤めをしていた頃にカンザスに行き、ふたつの州を行き来し、発砲現場に居合わせるという怖い思いもしたが、いっぽうでイスラムやヒブルーのひとに親切にしていただいて、信仰や民族で人を捉えることをやめた。

 というわけで思い入れたっぷりに映画を見はじめたのだが、こちらの勝手な感情など吹き飛ばすようにドライに、テンポよく、バリエーションに富んだ爆笑・失笑・苦笑の数々をこちらに催させる。中でも主人公を演じるサンティアゴ・バスケスが八面六臂の活躍だ。スクールカウンセラーにして、実は20年以上現場で死線を潜り抜けてきた現役麻薬Gメン――という設定なのだが、“パワフルでマッチョな瀬戸わんや”と呼びたくなる雰囲気、顔芸たっぷりの演技、そしてパンツ一丁姿の似合いっぷりと、もう、彼がフレームから外れたりしたら「早くサンティアゴを出してくれ」と言わずにはいられなくなるほど、心は掴まれた。犬、ウサギなど動物陣も重要な役割を演じているし、サンティアゴが奮闘するのも家族を始め、いろんな「大切なもの」のためなのだが……。

 なお、サンティアゴは俳優であるとともに、現役の警察官・格闘家でもあるとのこと。あざやかな三刀流だ。3月15日からヒューマントラストシネマ渋谷にて1週間上映。また、カナザワ映画祭特集上映として、3月30日に松本CINEMAセレクトにて上映される。

映画『キック・ミー 怒りのカンザス』

2024年3月15日(金)よりヒューマントラストシネマ渋谷にて上映

【あらすじ】
サンティアゴ・バスケスは、ミズーリ州カンザスシティ(KCMO)の聖シリル高校に勤めるお節介なスクールカウンセラー。ある日彼は、学校一の天才問題児ルーサーの退学処分を防ぐため…というよりも保身のため、娘の合唱発表会の前夜、全住民クレイジー揃いの隣町カンザス州カンザスシティ(KCK)に足を踏み入れる。ところが、なぜか地元ギャングのトラブルに巻き込まれ、挙げ句の果てにはパンツ一丁で町中を逃走させられるハメに。果たして“生徒と家族想いの先生”なバスケスは、大魔境KCKから生還できるのか!?

【キャスト】
サンティアゴ・バスケス、ラモーン・アームストロング、マシュー・スタサス、エリック・ローガン

【スタッフ】
脚本・監督・編集・制作:ゲイリー・ハギンズ プロデューサー:レオーネ・リーヴス 脚本・アートデザイン:ベッツィ・グラン 音楽:ジェフ・フリーリング
日本語字幕:川野耕一|宣伝デザイン:脇原由利香|宣伝:河合のび 滝澤令央 松野貴則|配給:Cinemago
2023/アメリカ/英語・スペイン語/85分/G(映倫区分)
(C)Meconium Pictures/Cinemago

公式サイト
https://www.cine-mago.com/kickme