2006年に公開されたいわくつきの一作が、劇場で復活する。
監督は、上海の租界をテーマにした近作『サタデー・フィクション』が日本でも話題を集めたロウ・イエ。学生の時には天安門事件(1989年)に参加したこともある。その直後から映画化のことを考えていたというから、構想15年以上ということになろうか。ふんだんな「(根無し草のように)愛を求める姿」、「愛し合い」、「衝突」のシーンを挿入しながら、天安門事件に限らず、その前後に主人公をとりまいた出来事や、ドイツ・ベルリンでのシーンもはさみつつ140分もの物語を作りあげた。
この作品は中国国内での上映が禁じられ、監督には5年間の表現活動禁止処分が言い渡された。もちろんこの事件を題材にすれば中国国内での活動に差しさわりが出ることは百も承知だっただろうが、彼は自ら取り組んだ。「ああ、上等だぜ」的な気持ちも少なからずあったのでは、と勝手に想像した。それほど作品が凛としている。耽美的な描写や洋楽の挿入も含めて、なんというか、「やりきった感」がうかがえるのだ。天安門事件も出てくるといっても、そこに的を絞った内容ではなく、「1987年頃から若者の間で起こっていた民主化の機運」の熱気と、「せっかくの天安門事件だったのに、それを境に離れ離れになってしまう恋人たち」の切なさが繊細に描かれている。
脚本:ロウ・イエ、メイ・フェン、イン・リー、音楽:ペイマン・ヤズダニアン(テヘラン生まれのピアニスト)、出演:ハオ・レイ、グオ・シャオドン、フー・リン、チャン・シャンミン、ツイ・リン、ツアン・メイホイツ、パイ・シューヨンほか。英語タイトルは「Summer Palace」、2006年公開時の35ミリプリントをテレシネし、ノンレストアでDCP化して上映される。
映画『天安門、恋人たち』
5月31日(金)より UPLINK吉祥寺、UPLINK京都、シネリーブル・梅田ほか全国12館一斉公開
<スタッフ>
監督:ロウ・イエ
脚本:ロウ・イエ、メイ・フェン、イン・リー
編集:ロウ・イエ、ツアン・チアン
撮影:ホァ・チン
美術:リュウ・エイシン
音楽:ペイマン・ヤズダニアン
製作:ナイ・アン、ファン・リー、シルヴァン・ブリュシュテイン
2006年製作映画『天安門、恋人たち』
製作国:中国・フランス
言語:中国語、日本語字幕付き
長さ:140分 撮影:35mm カラー DCP上映 音声5.1ch、スクリーンサイズ1:1.85 R18
配給・宣伝:アップリンク
(C)LAUREL FILMS/DREAM FACTORY/ROSEM FILMS/FANTASY PICTURES 2006