「1969年イタリア製ウルトラ・ポップ・アヴァンギャルド・セックス・スリラー」というキャッチフレーズが、まさにぴったりの一作である。さぞ日本でもリアルタイムで公開されてポップなアートやユーモアを好むひとにウケたのだろうなとか、90年代の渋谷系で再評価されていたんだろうなとか、勝手にイメージしていたのだが、日本上陸は今回が初めてとのこと。ロジェ・ヴァディム監督『バーバレラ』(67年)、増村保造監督『痴人の愛』(67年)、パスクァーレ・フェスタ・カンパニーレ監督『女性上位時代』(68年)あたりに触手をそそられた方なら、何を差し置いても観に行くことをお勧めしたい。
監督・脚本はピエロ・スキヴァザッパ。慈善財団の大幹部にして、マッドでエロなボンボンであるセイヤー役に扮するのは『黄金の七人』や『女性上位時代』にも登場したフィリップ・ルロワ。彼に監禁されるジャーナリストのメアリーには、チェコのプラハに生まれ、ドイツで名をあげたダグマー・ラッサンダーが扮する。セイヤーはメアリーを思いのままにしているように考えているが、実はメアリーの手のひらの上で転がされているだけだった、という感じ。『ベニスの愛』(70年)のサウンドトラックで名をあげるステルヴィオ・チプリアーニが音楽を担当、ジャズ・ミュージシャンとしての前歴をたっぷり反映したサウンドづくりで楽しませる。
また、家具、衣服などの色調やデザインは、「EXPO’70」でのパビリオンやコンパニオンを想起せずにはいられないほどカラフルかつ神秘的・宇宙的であり、甘美な「時代のにおい」が漂ってくるのもいい。
映画『男女残酷物語/サソリ決戦』
6月7日(金)より新宿武蔵野館、渋谷ホワイトシネクイント ほか全国順次公開
監督・脚本:ピエロ・スキヴァザッパ 製作:ジュゼッペ・ザッカリエーロ 撮影:サンテ・アキーリ 美術:フランチェスコ・クッピーニ 衣装:エンリコ・サバティーニ 編集:カルロ・リアリイ 音楽:ステルヴィオ・チプリアーニ
出演:フィリップ・ルロワ、ダグマー・ラッサンダー、ロレンツァ・グェッリエリ、バロ・ソレリ、マリア・クマニ・クアジモド、ミレッラ・パンフィーリ
キングレコード提供 アンプラグド配給
1969年|イタリア映画|ビスタ|90分|原題:Femina Ridens|英題:The Laughing Woman / The Frightened Woman|映倫区分:G / S-4383
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