コマ撮りアニメの名匠「川本喜八郎」&「岡本忠成」が残した作品を一挙に堪能できる特集上映

 日本(立体)アニメのレジェンドが残した作品に、極めつけの形で触れることのできる機会がやってきた。

 川本喜八郎没後10年、岡本忠成没後30年記念企画として『アニメーションの神様、その美しき世界 Vol.2&3』と題する特集上映が行なわれるのだ。

 プログラムAは川本5作品(80分)。「花折り」「鬼」「詩人の生涯」「道成寺」「火宅」を観ることができる。「詩人」では湯浅譲二、「火宅」では武満徹が音楽を担当。音数をそぎ落としたサウンドが、峻烈な画面を彩る。「鬼」以降のすべての編集に携わっている相澤尚子の手腕も称えたい。「詩人の生涯」は安部公房の原作。

川本喜八郎『道成寺』 (C)有限会社川本プロダクション

 プログラムBは岡本5作品(78分)。「チコタン ぼくのおよめさん」「サクラより愛をのせて」「虹に向って」「注文の多い料理店」「おこんじょうるり」を観ることができる。なかでも「チコタン」のインパクトには目が覚める。チコタンと出会って“ぼく”は心おどる毎日を送っていたのに、チコタンは車にひかれて急死してしまう(横断歩道を渡るときに持っていた旗が、徐々に血に染まっていく描写があまりにもリアルだ)。ひき逃げだったのだろう、「誰が殺した」と“ぼく”の怒りは増していくが、結局それが誰なのかわからないまま、物語は唐突に終了する。怒り、やるせなさ、プロテストをまとめて投げつけるようなエモーショナルな展開がすさまじい。しかも物語中では、それを、セリフではなくコーラスによる歌曲として表現するのだ。

岡本忠成『おこんじょうるり』 (C)株式会社 桜映画社 株式会社エコー

 宮沢賢治の名作に取り組んだ「注文の多い料理店」も、セリフはない。あの料理店側からの“多すぎる注文”、それに戸惑う主人公(客)たちのふるまい。それを、セリフなしで綴ってゆく、見せ方のうまさに感銘をうけた。また、「サクラより愛をのせて」では若き日の桂朝丸(現・桂ざこば)のナレーションも楽しめる。

 デジタルなどない時代の、本当に驚くほど丁寧で、キメの細かなストップモーション撮影(コマ撮り)を、愛のこもった修復版で味わえるのは実にぜいたくだ。もうこのようなアニメは二度と生まれないだろう。だから余計に、次世代にこそ見てほしい。5月8日から東京・シアター・イメージフォーラムで上映。

特集上映「アニメーションの神様、その美しき世界 Vol.2&3 川本喜八郎、岡本忠成監督特集上映(4K修復版)」

5月8日(土)よりシアター・イメージフォーラムほか全国順次公開

■上映作品
<Aプログラム>
川本喜八郎5作品(『花折り』『鬼』『詩人の生涯』『道成寺』『火宅』)合計80分

<Bプログラム>
岡本忠成5作品(『チコタン ぼくのおよめさん』『サクラより愛をのせて』『虹に向って』『注文の多い料理店』『おこんじょうるり』)合計78分

提供:株式会社WOWOWプラス
配給:チャイルド・フィルム
宣伝:プレイタイム

https://www.wowowplus.jp/anime_kamisama2-3/