交わることがなかったはずのふたりによる、奇妙で、味わい深い同居生活。心をふと温める一作。『違国日記』

 累計発行部数180万部を突破したヤマシタトモコ原作コミックの映画化。両親を交通事故で亡くした15歳の娘・朝(早瀬憩)が、その母の妹である小説家・槙生(新垣結衣)との心のふれあい、すれ違いなどが実にセンシティヴに描かれている。

 朝と槙生は、朝の両親の葬儀で会う。だが槙生は姉(朝の母)が大嫌い。が、大半の親戚たちは、突然両親を失ってしまった未成年の朝がどうやって今後の生活を送っていくかについて、真剣に考えたりはしない。ただ、ネガティヴな本音は漏れてきて、それが朝の心に入り込んでくる。そこで槙生は、「嫌いな姉」の娘である朝と同居を決める。おそらくこのとき、槙生のなかには、ある種「嫌い」以上にネガティヴな感情である「呆れ」を親戚の言動の中に発見したのだろう。

 以降、おだやかな二者の交流が始まる。どうしても朝の口からは亡き母の思い出が出てしまう。「あの姉にそんな一面があったのか」、槙生の心模様がしだいに変化していくあたりも快い。また私のような文章人間にとっては、彼女の執筆シーン、書斎、そこらじゅうにある付箋や資料(これで日々、仕事に追われているであろうことがわかる)の数々も大いに興味深いものであったことを記しておく。

 槙生を演じるのは新垣結衣、朝にはオーディションから選ばれた新星・早瀬憩が扮する。監督と脚本は、『ジオラマボーイ・パノラマガール』でも知られる瀬田なつき。

映画『違国日記』

6月7日(金)より全国ロードショー

出演:新垣結衣 早瀬憩 夏帆 小宮山莉渚 中村優子 伊礼姫奈 滝澤エリカ 染谷将太 銀粉蝶 瀬戸康史

監督・脚本:瀬田なつき
原作:ヤマシタトモコ 「違国日記」(祥伝社 FEEL COMICS)
音楽:高木正勝 劇中歌:「あさのうた」(作詞・作曲:橋本絵莉子) 製作:太田和宏 小山洋平 桑原佳子 奥村景二 プロデューサー:西ヶ谷寿一 西宮由貴 共同プロデューサー:西田佑子 ラインプロデューサー:飯塚信弘 深津智男 企画:橋本匠子 撮影:四宮秀俊 照明:永田ひでのり 美術:安宅紀史 田中直純 録音:高田伸也 衣裳:纐纈春樹 ヘアメイク:新井はるか 音楽プロデューサー:北原京子 音響効果:岡瀬晶彦 助監督:久保朝洋 制作担当:桑原 学 企画・制作:東京テアトル 制作協力:ジャンゴフィルム 製作委員会:東京テアトル、MaP、VAP、日販 配給:東京テアトル ショウゲート
(C)2024 ヤマシタトモコ・祥伝社/「違国日記」製作委員会

公式サイト
https://www.shodensha.co.jp/ikokunikki/