世紀の奇才、サルバドール・ダリの生誕120年・没後25年にふさわしい上映だ。英語タイトルは「Waiting for Dali」という。

では、誰が、何の目的でダリを待っているのか。待っているのは、大のダリ好きであるジュールズという男。レストラン「シュルレアル」のオーナーで、いつかこの芸術家に自分の店の食事を味わってほしいと思っている。ダリの妻・ガラにはけんもほろろの扱いを受けてしまうものの、そんなことではめげない。
舞台となるのは、1974年。39年から続いていたスペインの「フランコ体制」はまだあり(フランコの死去は75年)、それをなんとか打倒したいとする団体もあったし、圧政から逃れようと奮闘する者もいた。バルセロナで腕を磨いたシェフのフェルナンドは兄弟とともに海辺の街カダケスに移住し、最初は“この田舎町が”という感じではあったものの、やがて地元に溶け込み、「シュルレアル」で新たな才能を開花させてゆく。
が、このフェルナンドは、「いわくつき」の人物でもあった。この「いわくつき」と、ダリ命のジュールズと、「予測できない行動をする」大芸術家がいかに結びついていくか、その過程に立ち会えるは実にスリリングな鑑賞体験だ。果たしてダリは「シュルレアル」に食べに来るのか? それはこの映画を観た者だけが知ることができる。

“もしも、サルバドール・ダリと、伝説的な三ツ星レストラン「エル・ブジ」の料理長フェラン・アドリアが同じ時代に活躍していたとしたら”という発想から生まれたという、架空の作品。「イフ」の面白さを感じさせてくれる一作である。監督・脚本はダビッド・プジョル、出演はジョゼ・ガルシア、イバン・マサゲ、クララ・ポンソ等。音楽にはパスカル・コムラードの名もある。
映画『美食家ダリのレストラン』
8月16日(金)より新宿武蔵野館 、シネスイッチ銀座、シネ・リーブル池袋他にてロードショー
監督・脚本:ダビッド・プジョル
2023/スペイン/スペイン語、フランス語/カラー/115分
提供:コムストック・グループ/ファインフィルムズ
配給:ファインフィルムズ/コムストック・グループ
原題:Esperando a Dali 映倫:G 後援:スペイン大使館 Embajada de Espana / インスティトゥト・セルバンテス東京
(C)ESPERANDO A DAL? A.I.E. 2022