
“BISHU”とは、“尾州”のこと。愛知県尾張西部エリアから岐阜県西濃エリアにかけての地域をこう呼び、ここはまた毛織物(ウール)の大変な産地として世界的に高い評価を受けている。
主人公・史織はこの尾州で生まれ育った高校生。父・康孝は繊維工場を経営しているが、閉鎖の危機に直面している。史織は日々のルーティーンに強いこだわりを持っていたり、音に過敏なところがあり、いわゆる社会生活には苦痛を伴うところもある。ひとまず皆と一緒に合わせておく、的なことに関して不器用でもある。よって、高校生になっても「人それぞれの違い」という概念を認識できない幼稚なマインドを持った同級生にウザ絡みされることもある。デザインが得意で、夢もしっかり持っているけれど、それをよどみなく説明できるほど弁が立つわけではなく、時に父親との不協和音も生じる。が、彼女にはひじょうに理解力の高い姉・布美がいた。この姉が、主人公/父と鑑賞者の間にゆるぎない橋を架けているように感じられた。

後半は、ひたすら夢に向かっていく史織の姿がフィーチャーされる。友人との交流もさらに豊かなものとなり、しだいに表情や姿勢が凛としてきて、とあるコンテストでの姿は、前半のそれとは別人のよう。演出の冴えと共に、この役を演じた服部樹咲(『ミッドナイトスワン』で日本アカデミー賞新人俳優賞)の、ポテンシャルの高さもうかがえた。もちろん尾州の美しい風景も盛り込まれており、見ていくうちにこの地を訪ねたくなる気持ちが高まることだろう。布美役は岡崎紗絵、康孝役は吉田栄作、監督は『向こうの家』(「ええじゃないかとよはし映画祭2019」初代グランプリ)の西川達郎。東海地方を舞台とする全国公開映画を製作・公開する「シントウカイシネマ聖地化計画」の第1回作品でもある。
映画『BISHU~世界でいちばん優しい服』
10月11日(金)先行公開
10月18日(金)拡大公開
出演:服部樹咲 岡崎紗絵 長澤樹 黒川想矢 知花くらら 田中俊介 山口智充(友情出演) 近藤芳正 吉澤健 清水美砂/吉田栄作
監督:西川達郎 脚本:鈴木史子 西川達郎 義井優 音楽:小山絵里奈 製作総指揮:神谷哲治 プロデューサー:森谷 雄 竹田太郎 製作:「BISHU 世界でいちばん優しい服」製作委員会(神谷商会、フォワード、ケイ・クリエイト、イオンエンターテイメント、TK事業開発研究所) 製作幹事:フォワード 制作プロダクション:アットムービー 配給:イオンエンターテイメント
(C)2024映画「BISHU 世界でいちばん優しい服」製作委員会