インドの人気監督と人気俳優のコラボ第2弾。「悪」と「善」の二役を演じるヴィジャイのかっこよさ! 『カッティ 刃物と水道管』

ドッペルゲンガーを「幻覚」としてではなく、「現実」として体験してしまった男の物語といっていいだろうか。ピカレスク的要素もあり、卓越したコメディでもあり、寓話的でもあり、アクション・シーンも豊富で、歌や踊りも満載。そしてなによりも「熱血」。監督・脚本を手掛けたA・R・ムルガダース監督と人気俳優のヴィジャイによる、コラボレーションの第2弾である(2014年作品)。

 主人公はカッティ(刃物)の異名をとる泥棒で詐欺師。優れた運動神経を持ち、頭の回転も速く、話がうまく、しかも社交的だ。つまり「悪の道に入らなければ、かなりいい感じで社会生活を送れていたはずの」人物でもある。そのカッティが華麗にインド・西ベンガル州コルカタの刑務所からの脱獄に成功し、タイ・バンコクに高飛びすべくチェンナイの空港に向かうのだが、そこで、アンキタという女性に一目ぼれ。急遽国内に留まることにして、アンキタへの接近に目的をシフトする。これを要素Aとしよう。高飛びすることをやめた夜、カッティは銃撃事件を目撃してしまう。ぎりぎりのところで助かったその男の顔を見ると、なんと、カッティそっくりではないか。そこでカッティは一計を案じる。「こいつを俺の代わりとして逮捕させよう」。これが要素Bだ。

 物語は、このAとBの要素がブレンドしたり飛び散ったりしながら、好奇心をそらすことなく続く。「カッティの身代わりに逮捕されてしまった男」がどんな人物であるかも、丁寧に、ベールをはがすように描かれてゆく。反社会的な男であると恐らく自分でも思っていたはずのカッティ自身が、「社会」での自分の存在価値に希望を増していく過程にも身を乗り出して観入った。

映画『カッティ 刃物と水道管』

11月1日(金)より 新宿ピカデリー 他 全国公開

原題:Kaththi/2014年/タミル語/163分
配給:SPACEBOX
宣伝:フルモテルモ
(C)Lyca Productions

公式サイト
https://spaceboxjapan.jp/kaththi/