育児映画でもあり、サッカー映画でもあり。本国ドイツで100万人を動員するヒットとなった一作『ぼくとパパ、約束の週末』

 父と母は「どうにも同世代の子とは様子が違うなあ」と、10歳の息子・ジェイソンについて思っていた。ふと診断を受けさせたところ、「自閉症スペクトラム障害」であることがわかった。彼には自分だけの特別なこだわりがあり、それを他者に乱されるとパニックになってしまうのだ。が、そのこだわりは、他者にとっては取るに足らないことだったりするので、それがまたジェイソンの怒りや困惑に火をつける。学校でも当然、うまくいかないことが多い。しかし天文学への関心は猛烈にあり、それに関する知識も満載だ。

 ある時、好きなサッカーチームをクラスメイトに尋ねられたジェイソンは答えることができなかった。これが彼の隠れた「負けん気」に火をつけたのだろうか、「推しチームを決める行為」に出る。好きな選手がいるから、などの、ありがちな理由でチームを推したりはしない。ドイツ中のチームの試合を全部見たうえで、戦いぶりはもちろん、客筋(ネオナチは絶対NG)なども総合的に判断して、ようやく「自分にとっての推しチーム」に対する結論を出そうというのだから、時間も金もかかる。気が遠くなる話だ。推しが決まるころには今のクラスメイトも、もう過去のクラスメイトになっているかもしれない。が、そんな視野は、ジェイソンのマインドには1ミリもないだろう。幸いにも両親はサッカーが好きだし、試合が行われる日は週末で、それを見に行くための道程は、たいていの場合、父との二人旅である。ここで『ぼくとパパ、約束の週末』という邦題が生きる。

 監督はマルク・ローテムント、ジェイソン役はセシリオ・アンドレセン、父親のミルコ役にはフロリアン・ダーヴィト・フィッツ。

映画『ぼくとパパ、約束の週末』

11月15日(金)より新宿ピカデリー、角川シネマ有楽町ほか全国ロードショー
配給:S・D・P
(C)2023 WIEDEMANN & BERG FILM GMBH / SEVENPICTURES FILM GMBH

公式サイト
https://bokupapa-movie.com/