「モレッティ監督の最高傑作」との声も高いコメディ作品が日本上陸。『チネチッタで会いましょう』

 『監督ミケーレ黄金の夢』、『親愛なる日記』などで高く評価されるベテラン、ナンニ・モレッティ監督の半世紀に及ぶキャリアの集大成との声も高い一作。原題は『A Brighter Tomorrow』という。希望の明日、といったところか。

 そしてこの映画では、モレッティ自身がベテランの映画監督・ジョヴァンニを演じる。そしてジョヴァンニの妻・パオラは映画プロデューサーである。夫婦関係はそれほどよろしくない。ジョヴァンニが新作として撮りたいのは、「1956年のソ連によるハンガリー侵攻を舞台にした映画」。パオラは若手監督の映画をプロデュースしている。夫なら思いもつかないであろう新鮮な発想や描写はパオラを大いに活気づけたが、いっぽう、ジョヴァンニの「こだわり」「妥協のない姿勢」「時流に乗らず、信じるものだけを追い続ける」意志の硬さは鋼鉄のようだ。

 ヴィスコンティ『ベリッシマ』、フェリーニ『甘い生活』、ワイラー『ベン?ハー』『ローマの休日』などが収録されたイタリア・ローマの高名な映画撮影所“チネチッタ”で、新作づくりにいそしむジョヴァンニ。かつては誰もが彼の統率のもとに動いたのかもしれないが、今はそうではない。役者も激しく主張するし、作品作りが乗りに乗ってきたころにはプロデューサーが詐欺師であったことがわかって、てんやわんや。だがジョヴァンニは作品を完成させたい。俺の信じる映画道は、もう古いものになってしまったのか? そんな戸惑いを持ちつつ、映画への情熱を燃やし続けるジョヴァンニの姿に、自身をオーバーラップさせる中高年も多いのでは。

映画『チネチッタで会いましょう』

11月22日(金)よりヒューマントラストシネマ有楽町 ほか全国公開

監督:ナンニ・モレッティ 脚本:フランチェスカ・マルチャーノ、ナンニ・モレッティ、フェデリカ・ポントレモーリ、ヴァリア・サンテッラ 音楽:フランコ・ピエルサンティ 撮影:ミケーレ・ダッタナージオ

出演:ナンニ・モレッティ、マルゲリータ・ブイ、シルヴィオ・オルランド、バルボラ・ボブローヴァ、マチュー・アマルリック

2023年/イタリア・フランス/原題:Il sol dell’avvenire/96分/ヴィスタサイズ/日本語字幕:関口英子/後援:イタリア大使館/特別協力:イタリア文化会館/配給:チャイルド・フィルム
(C)2023 Sacher Film – Fandango – Le Pacte – France 3Cinema

公式サイト
https://child-film.com/cinecitta/