学生時代にレッド・ツェッペリンの「天国への階段」に大感動し、そのギタリストであるジミー・ペイジに傾倒して数十年。ただそのように演奏するのではなく、その時々にペイジが使用した楽器、アンプ、衣装、アクションなどに徹底的にこだわりながら、まさに「再現芸術」というしかない世界に自らを置く求道者がジミー桜井だ。この映画は彼の意欲、熱意、気迫をクローズアップした一作。途中、「演奏に自分は持ち込まない。ジミー・ペイジを弾くだけ」的なしゃべりも登場、その境地に達しているからこそ、ここまでの迫真のプレイができるのだなとの思いをいっそう強くさせる。
レッド・ツェッペリンは1980年に活動を終えた英国の4人組ロックバンドで、それぞれが超人クラスの技量と個性を持つ。さらにいえばジョン・ポール・ジョーンズはベースだけではなくキーボードにも才能を示す(つまり、彼を再現するなら両方の楽器をできなくてはいけない)。そうしたメンバーをモデルとしたトリビュート・バンドをやろうというだけでも一大事なのに、ジミー桜井は「より完璧(=より本家に近づく)」を目指すことに躊躇しない。だが、「ペイジ役以外の3人」は、「そこまで再現する必要もないんじゃない? だいたい俺たちツェッペリン本人じゃないし」的な、考えようによっては当たり前のアプローチもとる。が、それでは納得できないのがジミー桜井の性(さが)。その悩みと、演奏がうまくいったときや理想的なバンドメンバーを得たときの達成感や喜び、彼の姿勢を支援する妻や友人知人たちの生き生きした表情、そしてジミー・ペイジ本人の前での熱演……。この「愛の濃さ」はロックファン以外の心にも刺さるはずだ。監督ピーター・マイケル・ダウド。
映画『MR.JIMMY ミスター・ジミー レッド・ツェッペリンに全てを捧げた男』
2025年1月10日(金)より新宿シネマカリテほか全国順次ロードショー!
製作・監督・編集:ピーター・マイケル・ダウド
撮影:アイヴァン・コヴァック、マシュー・ブルート
音楽録音・ミキシング:ジェフリー・ジュサン/再サウンド・ミキサー:フィリップ・ブラックフォード
製作総指揮:ポーラ・ダウド
字幕監修:西江健博、横関清高、桜井純子
2023年|アメリカ・日本|日本語・英語|114分|16:9ビスタ|5.1ch|英題:Mr. Jimmy|提供:ニューセレクト|配給:アルバトロス・フィルム
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