巨匠ブレッソン監督、いわくつきの1作『白夜』が、4Kレストアで復活

 フランスの巨匠監督、ロベール・ブレッソンのいわくつきの一作が4Kレストアで復活した。1971年カンヌ映画祭で初公開されたのち、2012年に日本限定の35mmニュープリント上映が行われたものの、近年ではフランスでも上映不可能であったときく。「きく」と書いたのは私にその知識がなかったからだが、私はとにかくこれを「初めて観る」、半ば「新作」として接して、優雅なまでの時の流れ、洒落た音楽、選び抜かれたセリフから「名作の力」を受けた。

 ドストエフスキーの書いた原作では、19世紀のペテルブルクが舞台になっているという。その背景をブレッソンは現代(撮影当時)のパリに移し、セーヌ河畔やポンヌフもフィーチャーしながら若き男女の物語を描き出す。原題は『Quatre Nuits d’un reveur』(夢想家の四夜)、その通りの情景が描かれる。中心となるのは、画家のジャックと、片思いに胸をこがしたまま川に身を投げようとしているマルト。話の展開上、半ば当然ながらジャックはマルトに恋心を抱くのだが、マルトは先に触れたように意中のひとがいて、その面影は簡単に消し去れるものではない。ジャックのような悩みを体験したことのあるひとはある程度、この世にいるはずで、私もこの箇所が心に刺さった。加えてこのジャックという男、「妄想を語って録音する」という非常に特殊な趣味を持っている。劇中に登場するマイクロフォンやテープレコーダーは、そのためのツールである。なお主演のギヨーム・デ・フォレとイザベル・ヴェンガルテンは、これまでまったくの演技経験がなかったと伝えられている。

 音楽は『地下室のメロディー』なども手掛けた売れっ子ミシェル・マーニュと、クリストファー・ヘイワードが担当。ゆるやかなボサノヴァやポップスの響きが作品に奥行を与える。

映画『白夜 4K』

2025年3月7日(金)よりユーロスペース、角川シネマ有楽町ほか全国ロードショー

監督・脚本:ロベール・ブレッソン 原作:ドストエフスキー 撮影:ピエール・ロム 録音:ロジェ・ルテリエ 美術:ピエール・シャルボニエ 編集:レイモン・ラミ
出演:ギヨーム・デ・フォレ、イザベル・ヴェンガルテン、ジャン=モーリス・モノワイエ
1971年 | フランス・イタリア合作 | フランス語 | カラー | 83分 | 1.66:1 | モノラル | DCP | 原題:Quatre Nuits d’un reveur | 日本語字幕:寺尾次郎 | 配給:エタンチェ、ユーロスペース
(C)1971 Robert Bresson

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