嘘と真実がメダルの裏表のようにはっきりと分かれていれば、まだわかりやすいのに、現実は決してそうならない。あるひとにとっての嘘があるひとにとっての真実であり、光の当て方によって、ひとつの物事であっても嘘と真実のパーセンテージはたちまち変わってくる。

主人公のイム・サンジンは実に鼻っ柱の強い社会部記者。行動力もあるし、視点にも鋭いものがあるけれど、突っ走ってしまうと周りが見えなくなるところもあるようだ。が、大いに意気込んだ特ダネ記事が誤報認定されて、しばらくのあいだ停職になってしまった。しかも、個人情報がどこからか流れて、SNSで誹謗中傷されてしまう。ろくでもないネガティヴな嵐の中から、イムは信頼のおけそうなコメントを見つける。さぞ立派な人物が書き込んだのだろうと思いきや、実際に会ってみると青年だった。ネット世論操作を主導するコメント部隊「チームアレブ」のメンバーであるという。
なにしろ顔も素性も限りなくごまかせるのがネットの世界だ。たったひとりでさまざまな名前やアカウントを使って「マジョリティ」を作ることだって可能であろうし、アカウントの売買だってあるだろう。「世論を操作すること」に関してのハードルは限りなく低くなっているはずだ。そうした意味では、そこに丸腰で飛び込んでいるということではイム・サンジンは旧世代の人であり、アナログネイティヴかデジタルネイティヴかといわれたら前者である。
イムが青年に感じているのはあまりにもピュアな気持ちであり、彼に対して勝手にシンパシーを寄せるところがあったのかもしれないが、ジェネレーション・ギャップや感性の齟齬が可視化できなくなってしまったとき、現実はさらにつらく苦しいものになる。旧世代である私は、そんなイムに共感してしまうのだが。監督、脚本はアン・グクジン、出演はソン・ソック、キム・ソンチョル、キム・ドンフィほか。原作はチャン・ガンミョンによる同名小説。
映画『コメント部隊』
2月14日(金)よりシネマート新宿ほか全国公開
監督・脚本:アン・グクジン
出演:ソン・ソック、キム・ソンチョル、キム・ドンフィ、ホン・ギョン
配給:クロックワークス
2024年/韓国/109分/ビスタ/DCP5.1ch/字幕翻訳:福留友子/英題:TROLL FACTORY/映倫【G】区分
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