児童虐待への関心や理解を深めずにはいられない、新人児童福祉司の視点を主役に据えた重厚な一作『189』が公開へ

 不勉強にして「189」という電話番号を初めて知った。つまり児童虐待から“いちはやく”子供を助けるための児童相談所虐待対応ダイヤルであるという。この映画は、「児童虐待という社会問題に少しでも関心を持ってほしい」との思いから制作された。

 監督は加門幾生、脚本は長津晴子。中心となるのはひとりの少女だ。母親の連れ子である。この少女を母の再婚相手は気に入らない。しつけでもなんでもない、憂さ晴らしのリンチを延々繰り広げる。母親はその少女を産んだのだから全身全霊で守って当然だと思うが、なにしろ夫は狂気のキャラクター、猛烈な管理体質でもある。しまいには、母は自分の心をも病んでしまう。

 主人公の新人児童福祉司・坂本大河には、中山優馬が扮する。一見、若さにまかせた熱血漢のようだが、ぼくはそう考えたくない。こんなにひどい、子供をめぐる現状をまのあたりにして、それを良い方向に変えることができるのかもしれない職についていたのなら、心を持っていれば誰だって突き動かされるに決まっている。もちろん彼が所属する役所の中にはしっかり、そうではないキャラクターの上司もいるのだが。非情な人間が非情さを強め、狂気を持つ者がそれに溺れるほど、児童福祉司のマトモぶり・心に血の通う暖かさが強く浮かび上がり、コントラストの妙が深まっていくのである。

映画『189』

12月3日(金)より、全国公開

<キャスト>
中山優馬、夏菜 ほか

<スタッフ>
監督:加門幾生
脚本:長津晴子
配給:イオンエンターテイメント
(C)2021「189」製作委員会

https://189movie.jp/