ゆうばり国際ファンタスティック映画祭2020オープニング作品『ファンファーレが鳴り響く』ヒロイン「祷キララ」オフィシャルインタビュー解禁!

 ゆうばり国際ファンタスティック映画祭2020のオープニング作品として上映された森田和樹監督の待望の最新作『ファンファーレが鳴り響く』は、森田監督の人生を投影するスプラッター青春群像劇。病気のせいで、仕事の面接で面接官に相手にもされなかった森田監督が、吃音症についての動画を見た時に、自分の中でリンクして、自分を吃音症の主人公に投影させ、執筆した。

 主演は「デイアンドナイト」、「ラ」、「花と雨」などの話題作に次々と出演する笠松将、ヒロインに「左様なら」「アイネクライネナハトムジーク」「楽園」など、存在感のある役柄を演じることに定評がある祷キララ。その他、川瀬陽太、黒沢あすか、大西信満、日高七海、上西雄大、木下ほうかなど、日本映画を支えてきた役者たちが脇を固める。

 本作は、10月17日より新宿 K’s cinemaを皮切りに、10月23日より岡山メルパ、11月13日より青森松竹アムゼ、12月11日より千石劇場(長野)、kino cinema天神(福岡)、2021年1月16日より宇都宮ヒカリ座ほか、横浜シネマジャック&ベティ、名古屋シネマスコーレ、第七藝術劇場(大阪)、京都みなみ会館、土浦セントラルシネマズ(茨城)での上映が決定。

 新宿 K’s cinemaでは、10月17日(土)に、14:40〜の回上映後及び、16:45〜の回上映前に、笠松将、祷キララ、森田和樹監督らによる初日舞台挨拶が行われる。

 この度、ヒロイン・祷キララのオフィシャルインタビューが解禁となった。

――本作の脚本を読んで、どう思われましたか?
 始め、企画書とプロットも一緒に読んだんですけれど、「青春スプラッタームービー」という言葉があって、私の役も人を殺したり罪を犯していくし、過激というか激しい映画で、理解しづらい役なのかと思ったんですけれど、ある意味ビジュアルとかプロットを裏切る脚本でした。

 脚本を読んだ時は、七尾光莉という役が大人を殺すというところに辿り着くまでの過程、1番大元の原因やそれに対する気持ちに対して納得できる部分が見つけられました。猟奇的な殺人犯みたいに描かれているわけではなくて、心情だったり人物の部分を掘り下げて考えると納得ができました。脚本もそういう風に作られていたので、読んだ時に、「これは表現をするのはきっと難しいけれど、でもすごく面白いな」と思って、どんな映像になるのか気になりました。

――他人の血を見たいという強い欲求を持つ七尾光莉という役でしたが、どのように役作りをしたんですか?
 行動や取るアクション1つ1つは過激で、なかなか理解しがたいというか、結構異常に見られると思うんですけれど、でもそれには原因もあるし、七尾光莉っていう役ってすごく等身大の高校生で、10数年生きてきた世界の中で見てきたことや知ってきたことや出合ってきたものとか、精一杯の自分の世界の中で考えてその結果、すごく大きい覚悟を決めて、ああやって逃避行をしていくことになったので、それまでの光莉の中の変遷というか揺らぎについて考えました。

 そういう苦しいことがあったり、大きく自分自身が揺らぐことがあった時に、そこに手を差し伸べてくれる大人だったり、声をかけてくれる人だったり、そういう風に自分が受け取れる音楽や映画など、外側の世界を知る機会がなかったというだけで、それを知ったか知らなかったかで道が分かれていくだけで、七尾光莉が元からおかしかったとか、異常だったとかでは全くないと思います。役の境遇は私自身とはすごくかけ離れているんですけど、だからといって、すごく遠いところにあるわけではないと思えたので、自分が役に共感できる部分だとか、役に納得できる部分を私が守らないと、この役は成立しないなと思いました。

 どういう風にしゃべろうとか動こうとかいうところを考えるよりも、七尾光莉の内にあるもので、でも絶対に守らないといけないものを私はただ守ろうと思いました。でもそこって、簡単にできることじゃないから、それは自分自身も気をつけながら、そこを忘れたら終わりだなと思いながら、撮影に臨みました。

――人を刺す時の笑顔が怖かったですが、人を刺すシーンではどのようなことを考えていたんですか?
 唯一初めて自分で見つけた興味が湧いたことが、そういう血を見るっていうことだったと思うんですけれど、好きなこととか興味があることが今まで何もなかったのかなと思いました。だからこそ、そういう数少ない心から気になるものに対して、それを見るためなら、常識的に良くないことでも、常識的にいいか悪いかを考える前に、それよりも見たいっていう気持ちが勝つ位のものだったから、それを自分でアクションを起こして見れたら、気持ちいいのではないかと思いました。

 七尾光莉も見慣れてはいないから、楽しいって言ったらちょっと誤解を招きそうですが、「求めていたものが見れた」「こんな風な反応するんだ」「こんな風に血が出るんだ」というのは、快楽的に感じました。気持ちいいというか、「面白い。気になる。もっと見たい」みたいになって、頬が緩む感じがありました。

――七尾は、ただ単に他人の血をみたいというだけではなく、バックグラウンドがありました。そのあたりの深みを出すために工夫したことはありますか?
 光莉は血が見たいけれど、そのために結構な手数を踏んでいて、そこへの執念もあるし、ただ血を見て楽しいというよりも、もっと深い快楽を覚えています。でも、そういう風に思うようになったのも、昔の記憶だったり、それからの体験があってのことだから、映画の中の現在よりも昔のことを考えたりだとか、自分がどうやったら納得できるかを考えました。

――森田監督はご一緒していかがでしたか?
 初めてお会いした時に、もともと監督が脚本を書く時から、この七尾光莉という役を、私をイメージして考えてくださっていたとおっしゃっていました。その上で、作品や役の話をたくさんしました。「こうしてください」って言われたことはなくて、初めから信頼してくださっているのが伝わってきました。だから、私も監督のことを信じようと思いました。やりながら、「私はこ
う思う」と思ってやったけれど、監督が「もっとこの気持ちが出てこないかな」とか「こういう風にイメージしてた」という自分の中でも絶対に貫きたいというものがあった時は、真っ向からぶつかってきてくれて、私もぶつかって、一緒に話し合って、シーンを作ったりできました。

 そうやって自分の中で「こうしたい!」っていう気持ちが強くあるっていうのは、その分作品や役に対する気持ちも強くあるんだなと感じて、そこはすごく嬉しかったです。

――一緒に逃亡する明彦役の笠松将さんとの共演はいかがでしたか?
 笠松さんはもともと共演したいと思っていて、今回初共演でした。本人の見た目だったりイメージで、飄々とクールな感じの方なのかと思っていたんですけれど、現場でもすごく話してくださいました。でも、だからといって、すごく仲良しになって盛り上がるということもなかったんです。それは役や作品のことを優先して考えて適度な距離感を保ってくださっていたので、すごくやりやすかったです。

 笠松さんと共演できるってわかった時に、この役で共演できるのなら、新しい化学反応が生まれそうだなと思いました。笠松さんもきっと笠松さんの中で生まれた明彦の振る舞いだったり言葉だったり明彦として向き合ってくれるだろうから、そうなった時に現場に行って、シーンの中で新しい感情が生まれたりだとか、思ってもいなかった気持ちになったりとかがありそうだなと楽しみでした。

 実際現場でも、妥協せず、ぶつかってきたと言ったら違うけれど、笠松さんは笠松さんが信じている明彦を本当に信じ切って体現してくださったから、私も感化される部分がありました。その上で、役として葛藤があったり、心が動かされる部分がたくさんあって、そこが俳優として、すごく幸せな経験だなと思いました。

――役としては、祷さん演じる七尾さんが明彦を引っ張っていくような形でしたが、笠松さんとは実際は7歳違いですが、同い年に見えるように、何か工夫はしましたか?
 監督も交えて3人でお話しした時に、笠松さん自身が「幼く見えるように何かしようとはしないです。そういう風に作るよりも、僕として出るしかないから」とおっしゃっていて、そうだなと思いました。年齢って数字はあるけれど、人によって年の取り方は違うし、役によっても違うので、笠松さんは役の人間の部分を1番に考えて現場に臨むとおっしゃっていました。

 私自身もちょっと役より年齢が上だったので、笠松さんとのバランスを考えるというよりも、笠松さんと役のことをお互い考えて、その上で出てくるものが1番大事だなと思いました。

――木下ほうかさんとのシーンの撮影はいかがでしたか?
 ほうかさんは演技のプランやシーンをどうやって作るかを、積極的に一緒に考えようとしてくださいました。ほうかさんが演じる国会議員の部屋に入って、どういう風に言葉を言おうか迷っていたんですが、初めから七尾を貫き通すのも、ちょっと振る舞いを変えてみるのもいいのかなと思っていたら、ほうかさんが、初めはちょっと七尾らしくなくてもいいんじゃないと、一緒にシーンのことを考えてくださいました。

 それで1回やってみて監督の反応を見てみようって一緒に試して、同じ目線に立ってシーンのことを考えてくださったから、私も気負わずその場にいられました。監督もほうかさんと一緒に考えたプランを面白いねって言ってくださったので、そういう風にシーンを一緒に作ることができて嬉しかったです。

――笠松さんがぽろっと言って嬉しかった言葉があると聞きましたが?
 笠松さんと同じシーンが多かったけれど、そんなに盛り上がってしゃべるということもなくて、くっつかず離れずみたいな感じだったんです。私は笠松さんとのシーンで、笠松さんから出るもので心を動かされたりだとか、いろいろな感情を持つことがあったりと、役者として1番楽しい瞬間を感じられたので、すごく素敵な俳優さんだと思っていました。

 ただ、仕事のことをしゃべることもなかったから、笠松さんが一緒にやってどうだったのか最後までわからなかったんです。最後、ラストカットを撮った時に、ずっと明彦と光莉がずっと向こうまで歩いていくというシーンで、やっとカットかかってカメラの方に一緒に戻っていた時に、笠松さんがぽろっと、「この映画、面白いかもな」って言ったんですよ。それがすごく嬉しくて。盛り上げるためにだとか、お世辞とかでは一切なく、ふと思って出ちゃったみたいに言っていたのがすごく嬉しかったです。

 一緒に作品を作ってきて私たちが俳優としてできることはすべてやって、それが終わった時に「面白いかもな」と言ってくれた時に、一緒に作品を作った時間が認められたような気がして、すごく印象的でした。

――他に何か撮影時の面白いエピソードはありますか?
 同級生にいじめられるシーンの時に、笠松さんは体も大きいし、年齢も上なので、カットがかかったら、遊びで殴り返すふりをしていたのが面白かったです。

――完成した作品を見てどう思いましたか?
 脚本を一人で読んだり現場にいた時に、こういう作品になるのかなとか、見る人はこう感じるのかなと思っていたものがいい意味で裏切られた気がします。フラットにこの作品を見た方は、一体どこが気になるんだろう、どこに目をつけるんだろう、どの部分を受け取るんだろうということが読めないので、正直ドキドキしています。監督が、この作品を作る上で大事にしたかったもの、貫きたかったものを貫いたんだろうなって思いました。それが 1番だなと思うので、その上で見た人がどう思うか受け取り方はそれぞれ違うでしょうし、好き嫌いや響く響かないもあるかもしれないけれど、この作品が響く人ってきっと、この作品に出会うべき人なのかなとも思ったりします。そういう人に一人でも多く届いて欲しいと思います。

――本作で特に注目してもらいたい部分はありますか?
 この映画って、七尾光莉と明彦の二人の映画だと思っています。光莉が引っ張っていくように物語は進むけれど、心を決めて覚悟を持って行動を起こしているけれど、明彦の存在ってすごく大きかっただろうなって思っています。映像としてできた時に、二人が揃っている場面の危うい空気感が映っていると思いました。いろんなことがあって時間が経つにつれて、二人の距離が縮んだり離れたり、でもくっつかなかったり、離れきれなかったり、っていう機微が映像に鮮明に残っていると思ったので、そういう部分を見ている方も楽しんでくださったら嬉しいです。

――webインタビューの読者の方にメッセージをお願いします。
 この映画を見た時に、ビジュアルのイメージだったり、謳い文句を裏切っているとすごく思いました。あのビジュアルで「こういう映画なんだ」と思うと、構えてしまう人もいると思うんですけれど、全然そういう風に見る必要はないなと思います。

 私が演じた役って、苦しいことがあって、自分の世界の中だけだと救いがなくて、そのまま時間が経って、最後に大人を殺していくという決断をするけれど、苦しいことがあったり、自分の中で救いが探せないことって、身近にあるのではないかと思います。悲しいことや苦しいことがあったら、普段よりも視野が狭くなっちゃって、そういう時に、光莉は救いとか外の世界の言葉だったり支えを受け取ることができなかったけれど、受け取ることができる人も、実は少ないのかなと思っています。迷っていたり、葛藤していたり、苦しいというような気持ちに共感できる人には、何か響く瞬間があるんじゃないかなと思うので、「こういう作品」という風に見ずに、私たちが現場で作ってきた時間をスクリーンを通して一緒に経験してもらいたいし、それを経験した時に、この映画が外の世界の支えに繋がるきっかけになるんじゃないかと信じているので、そういう人に届けたいなと思います。気負わずに見ていただきたいです。

映画『ファンファーレが鳴り響く』

10月17日(土)より新宿K’s cinemaほか全国順次公開

<STORY>
高校生の明彦(笠松将)は、鬱屈した日々を過ごしている。持病の吃音症が原因でクラスメイトからイジメられ、家族にその悩みを打ち明けられないどころか、厳格な父親(川瀬陽太)からは厳しく叱咤され、母親(黒沢あすか)からは憐れんで過度な心配をされ、脳内で空想の神を殺しなんとか自身を保っている状態だ。そんなある日、明彦はクラスメイトの才色兼備な女子生徒・光莉(祷キララ)が野良猫を殺している現場に偶然居合わせてしまう。光莉は、生理の時に見た自分の血に興味を駆られ、他者の血を見たい欲求を持っていた。光莉は「イジメてくる奴らを殺したいと思わない?」と明彦に問いかける。その日から明彦の中で、何かが変わったのだった。明彦は、自身が学校でイジメられていることをホームルーム中に訴える。そのせいで明彦はさらにイジメグループから追い回されることになり、街中逃げ回るが、ついに追いつめられる。しかしそこで、光莉がまた野良猫を殺していた。そしてそのナイフで、光莉はなんと明彦をイジメている同級生を殺してしまう…。二人はその現実から逃げるように都会へと向かう。その最中に出会う、汚い大人たちをさらに殺していき、二人の血に塗れた逃亡劇は確実に悲劇に向かっていくのだった…。

<出演者>
笠松将、祷キララ、黒沢あすか、川瀬陽太、日高七海、上西雄大、大西信満、木下ほうか、他

<スタッフ>
監督・脚本:森田和樹 製作:塩月隆史、人見剛史、小林未生和、森田和樹 プロデューサー:小林良二、鈴木祐介、角田陸、塩月隆史 撮影:吉沢和晃 録音:西山秀明 助監督:森山茂雄 特殊造形:土肥良成 主題歌:「美しい人生」sachi. 制作・配給・宣伝:渋谷プロダクション 製作:「ファンファーレが鳴り響く」製作委員会
(C)「ファンファーレが鳴り響く」製作委員会

<新宿K’s cinemaの上映時間>
・10月 17日(土)から 10月 23日(金)
 14:40〜、16:45〜、18:50〜
・10月 24日(土)から 11月 6日(金)
 15:00〜、17:00〜