デミ・ムーアとマーガレット・クアリーが、とんでもないシチュエーションで“共演”。話題沸騰の問題作が日本公開。『サブスタンス』

 すげえ! と声を何度あげたくなったことか。約140分の長編だが、この倍の時間でも私は興奮を持続しながら観たことだろう。そして終わり方が憎い。ストーリーの性格上、続編は望めない感じであるけれど、それにしては余韻を残しすぎのエンディングだ。デミ・ムーアの役者魂も爆発している。

 展開のあらゆる箇所が伏線になっているようにも感じられたので、心を無にして作品に立ち向かうのはベストかと思うが、「エリザベスとスーの葛藤」が物語のど真ん中のひとつだと私は感じた。このふたりはライバルで、心の中でそれぞれを「ケッ」と思っている。が、このふたり、実は根源が一緒であり、「スーにはエリザベスの経験がある」。その状況を作ったのが「サブスタンス」という名の謎めいた再生医療なのだ……。

 と書いても何が何やらだと思うが、特殊効果の生々しさは「22世紀に人体の不思議展がおこなわれたら」的な近未来的な情景を私に浮かばせ、眼球や口をここまでドアップにするかというぐらいドアップにする描き方にも唸らされた。偉そうなテレビ業界のジジイが(おそらく女性をルッキズムの道具としてしか見ていないような感じで)、ときにクチャクチャとメシを喰ったり、いまどき喫煙なんかもしながら、非常に失礼な言葉を50歳のエリザベスに吐き、その反動のように若いスーをネッチョリとほめまくるのだが、まさにそのときの口の撮り方がもう、画面から口臭がただよってきそうなほど生々しいのである。

 エリザベスを演じるのはデミ・ムーア、スーを演じるのはマーガレット・クアリー。監督と脚本はコラリー・ファルジャが手掛けた。それにしても、よくこんな筋書きとカメラ割を考えついたものだ!!! 第77回カンヌ国際映画祭 脚本賞、第49回トロント国際映画祭 観客賞、第82回ゴールデングローブ賞、第 31 回 SAG(全米俳優映画組合賞)、第97回アカデミー賞 メイクアップ&ヘアスタイリング賞などに輝いた。

映画『サブスタンス』

2025年5月16日(金)公開

監督・脚本:コラリー・ファルジャ
出演:デミ・ムーア、マーガレット・クアリー、デニス・クエイド
The Substance(原題)/イギリス・フランス/142分/R-15 配給:ギャガ
(C)2024 UNIVERSAL STUDIOS

公式サイト
https://gaga.ne.jp/substance/