38年間走り続けるパンクバンド「the原爆オナニーズ」の、今なお冴えわたる姿が堪能できるドキュメンタリー『JUST ANOTHER』、いよいよ10月24日に公開

 結成から38年。名古屋を拠点にパンク・ロックを発信するthe原爆オナニーズのドキュメンタリー映画『JUST ANOTHER』が完成した。

 ぼくが日本のパンク(系)が好きな理由のひとつに赤痢、イヌ、スターリン、アナーキー、ばちかぶり、あぶらだこ、のいづんずり(ノイズ+センズリ)などイカした命名に惹かれたから、というのもあるのだが、なかでもthe原爆オナニーズというグループ名は無類のインパクトだった。“セックス・ピストルズを超えてやる”という意思が、こんなにも伝わってくる団体名はない。誰それカルテットとか誰それオーケストラが普通で、ウェザー・リポートやアート・アンサンブル・オブ・シカゴという命名ぐらいで斬新扱いされるジャズ界(今はずいぶん、ひらけたが)とはまったく違う次元に気持ちよくなったことを覚えている。

 だが音楽はひたすら正統派である。いわゆる正統派へのカウンターであっただろうパンク、そのなかの正統派とはいったい何なのだというツッコミも受けそうだが、そんなどうでもいい理屈や邪念を吹き飛ばし、バンドのサウンドはひたすらドライヴする。EDDIEのダウンピッキングはパンク・ベースの鑑というべきものだし、ドラマーJOHNNYの左手はジーン・クルーパやバディ・リッチの時代から受け継がれるレギュラー・グリップだ。ふたりが生み出すリズムの妙が、当映画では卓越した音響でしっかり捉えられている。むろんTAYLOWのヴォーカル、SHINOBUのギターも冴えに冴える。このリズム隊をバックに歌うこと、かき鳴らすことの喜びを隠せないといった感じだ。

 ピストルズだけではなくジョナサン・リッチマンやラモーンズからの影響、TATSUYA(中村達也)など歴代メンバーに触れる箇所もあり、KEN(横山健)との再会セッションまで盛り込まれている。「HUCK FINN」(ぼくはここでマゾンナやPhewを見たことがある)など名古屋屈指のライヴハウス・オーナーの証言も実に貴重。1978年のロンドン体験がいかに自分を変えたかを語り、「同年代と音楽の話をしても30年前の話題で止まる。やっぱり今がいい。今に注目しなければ」と若手バンドのライブを前のめりになって楽しむTAYLOWの姿もすこぶる印象に残った。

 ロック好き、パンク好きはもちろん、付き合い始めたばかりのふたりや、「初めてのデートで何の映画を見ようか」と考えているひとたちにも見てほしい。長く続けるという行為はこんなに重みのある、誠実でロマンティックなことなのだ。

映画『JUST ANOTHER』

10月24日(土)より新宿K’s cinemaほかにてロードショー 以降、全国順次公開

【出演】
the原爆オナニーズ<TAYLOW、EDDIE、JOHNNY、SHINOBU>
JOJO広重、DJ ISHIKAWA、森田裕、黒崎栄介、リンコ他

【ライブ出演】
eastern youth、GAUZE、GASOLINE、Killerpass、THE GUAYS、横山健

【スタッフ】
企画・制作・撮影・編集・監督:大石規湖
宣材写真:菊池茂夫
1.78:1|カラー|ステレオ 90分| 2020年|日本|配給:SPACE SHOWER FILMS
(C)2020 SPACE SHOWER FILMS

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