古典的名作小説を現代的な感性で映画化。第77回ロカルノ国際映画祭でも称賛の『美しい夏』

 権威あるストレーガ賞を受賞した同名小説(原作:チェーザレ・パヴェーゼ)の映画化。その小説は1940年頃から書かれ、49年に出版されたが、映画で描かれているのは1938年、イタリア・トリノの情景。つまり戦争の暗雲が迫りつつあった頃だ。ちなみに日独伊三国同盟は40年9月に結ばれている。

 主人公は10代の女性ふたり。お針子として働く16歳のジーニアと、画家のモデルとして生活する3つ年上のアメーリアだ。幅広い交友を持ち、たばこも吸い、どこか達観したような発言をするアメーリアは、まだ19歳でしかないというのに、ジーニアにとってひどく大人びた、頼もしい存在に感じられたことだろう。ふたりは徐々に心を通じあわせ、ジーニアは「永遠に縮まることのない3歳の差」をどうにかして埋めようとするかのように自身を活性化させてゆく。だがそれはアメーリアにとってはつい数年前に通ってきた道であり……。この映画でのジーニアは真の、心から愛するものを見つめあぐねたまま、終わってしまったような印象を受けたが、このあたり、見るひとによって所感が分かれそうだ。つまりそれほど想像力に訴える作品なのである。

 色彩、光彩、どれも「映像美」と呼びにふさわしい形で目に飛び込んでくる。音楽もファッションもノスタルジックでチャーミング、往年のアメリカン・スタンダード・ナンバー「These Foolish Things」を思わせる楽曲が挿入されているのも興味深い。ジーニアにはイーレ・ヴィアネッロ、アメーリアにはディーヴァ・カッセルが扮するが、後者はモニカ・ベルッチとヴァンサン・カッセル間に生まれた超サラブレッドである彼女の出演も話題を集めることだろう。監督・脚本はラウラ・ルケッティ、YEBISU GARDEN CINEMA、シネスイッチ銀座、アップリンク吉祥寺ほか全国順次公開。

映画『美しい夏』

2025年8月1日(金)よりYEBISU GARDEN CINEMA、シネスイッチ銀座、アップリンク吉祥寺ほか全国順次公開

監督・脚本:ラウラ・ルケッティ
出演:イーレ・ヴィアネッロ、ディーヴァ・カッセル
原作:『美しい夏』チェーザレ・パヴェーゼ作 河島英昭訳(岩波書店)
2023/イタリア/イタリア語・フランス語/111分/カラー/2.39:1/5.1
原題:La Bella Estate 字幕:増子操 字幕監修:関口英子
提供:日本イタリア映画社 配給:ミモザフィルムズ 後援:イタリア大使館 特別協力:イタリア文化会館
(C)2023 Kino Produzioni, 9.99 Films

公式サイト
https://mimosafilms.com/labellaestate/