1984年のニューヨークを舞台にした、スペイン・フランス合作のアニメーション映画。シンボル的な場所もいっぱい出てくるので、ニューヨークに行ったら「ロケ地探訪」をしても面白いはずだ。

主人公は、犬の「ドッグ」。マンハッタンのアパートに暮らし(なんたるうらやましさ)、かわりばえのしない毎日を過ごしている。孤独だから、一日が長い。ある日、テレビで「友達ロボット」の存在を知り、通販で購入。果たしてそのロボットはとてもフレンドリーで、ドッグの表情も笑顔になった。二人でいろんなところに出かけて、楽しい時を過ごしたものの、夏の終わりに海水浴に行ったことが物語を暗転させる。ロボットがさびて満足に動かなくなってしまったのだ。ドッグは一刻も早く直そうとビーチの外に助けを求めるが、そのあいだにビーチは閉鎖。翌年の夏まで立ち入り禁止になってしまった。
ドッグは柵の外からしかロボットを見ることができず、ロボットはあおむけになったまま一層さびていくのを待つのみ。だが、せっかくできた友のことを簡単に忘れることなどできるわけもない。この「犬とロボットの関係」を、人間どうしの友情や恋愛におきかえつつ、自分の経験と照らし合わせたら、この映画がますます身近に感じられてくるはずだ。

監督・脚本のパブロ・ベルヘルはベテランだが、アニメ映画に臨むのはこれが初めて。結果、第96回アカデミー賞の長編アニメーション映画賞にノミネートされた。音楽ではアース・ウィンド&ファイアーの「セプテンバー」(12月に、9月の出来事を思い出す歌詞を持つ)が効果的に使われているほか、ジャズ調のサウンドトラックにはトム・ウォーバートン(ベース)、マーク・ミラルタ(ヴィブラフォン)など名手が参加しているのも嬉しい。
映画『ロボット・ドリームズ』
11月8日(金)新宿武蔵野館、ヒューマントラストシネマ有楽町 ほか全国ロードショー
監督・脚本:パブロ・ベルヘル 原作:サラ・バロン
2023年|スペイン・フランス|102分|カラー|アメリカンビスタ|5.1ch|原題:ROBOT DREAMS|字幕翻訳:長岡理世
配給:クロックワークス
(C)2023 Arcadia Motion Pictures S.L., Lokiz Films A.I.E., Noodles Production SARL, Les Films du Worso SARL