大成功を収めたマネージャーとしての姿と、一人の男性としての葛藤。エプスタイン像を立体的に描き出す。ブライアン・エプスタイン 世界最高のバンドを育てた男』

 ザ・ビートルズ界隈は本当に面白い。誰の視点にスポットを当てても鮮やかなまでに異なる風景が描かれる。秘書を務めていたフリーダ・ケリーを題材にしたドキュメンタリー「愛しのフリーダ」の日本公開から早12年、今度は1967年夏まで二代目マネージャーを務め、港町の荒くれロックンロール・バンドを世界ナンバーワンのアイドル/大衆音楽界の革命児へと成長させたブライアン・エプスタインにまつわる作品の登場だ。

 ただしドキュメンタリーではなく、俳優のジェイコブ・フォーチュン=ロイドがエプスタインに扮するドラマ作品だ。そしてこのエプスタイン、ときに画面の登場人物という扱いにあきたらず、こちら(視聴者)を向いてト書きのようなセリフも発する。1960年代初頭当時としては珍しくポップスやロックの品揃えに力を入れたレコード店を成功させていたこと、その「カン」に導かれてザ・ビートルズのライブに接したところ途方もない将来性を感じてマネージャーを志願したこと、だがオーディションは落選続きだったこと、やっとの思いでレコード会社との契約が成立したこと、ドラマーの交替、アメリカ進出、絶頂、宗教的な発言からのトラブル、ライブ活動の中止などがテンポよく描かれ、エプスタイン自身の事柄、つまり親との微妙な関係、(当時は非常に生きづらい位置にあった)同性愛者であったこと、ある俳優との不幸な交際、薬物への依存、なども描かれている。そして個人的には、シラ・ブラック、ビリー・J・クレイマー&ダコタズなど、初期ビートルズの「きょうだいぶん」が登場していることも嬉しかった。

 ビートルズのオリジナル曲は使用されていないものの、「マネー」など彼らが取り上げたカヴァー曲に関しては、比較的それに近い形での演唱を聴くことができる。

映画『ブライアン・エプスタイン 世界最高のバンドを育てた男』

9月26日(金)より、TOHOシネマズ シャンテほか全国公開

監督:ジョー・スティーヴンソン
出演:ジェイコブ・フォーチュン=ロイド、エミリー・ワトソン、エディ・マーサン
2024年/イギリス/英語/112分/スコープ/カラー/5.1ch/原題:MIDAS MAN/日本語字幕:斉藤敦子 字幕監修:藤本国彦
配給:ロングライド
(C)STUDIO POW(EPSTEIN).LTD

公式サイト
https://longride.jp/lineup/brian/