これは濃厚な一本だ。「731部隊の真実を追う」ということと、「現在の医療現場が抱える様々な問題に関する医療関係者への取材」を、70数分の中に収めるという離れ業がここにある。私が731部隊について知ったのは松本清張か誰かの著作だったと思う。とんでもないエリートたちが、とんでもない技術をもって、一種の高みにいたはずだ。が、用途は「非道」のひとことにつきた。つまり捕虜などを使っての人体実験である。しかもこの国は戦争に負けてしまったから、戦勝国にその実験データを持っていかれて(あちらも対日戦争末期にヴァージョンの違う核爆弾を2つも落としたうえ――敵国でもコーカソイドのいるところには落とさないのに――、占領後も治療より先に被爆の経過をデータ化していったという点では、すさまじい鬼畜だ)、間接的に、あちらの今後の戦力に貢献することにもなってしまったのだから情けない。

731部隊の人々は、頭脳は優秀であったから、少なくない人物が戦後の医学方面の大御所となっていく。そしてその影響力は、さまざまな形で今もある。だから「戦争と地続きの私たちの日常に一石を投じるドキュメンタリー」という制作側の言葉が実感できる。監督は山本草介。
映画『医の倫理と戦争』
2025年11月22日より、ユーロスペースほか全国ロードショー
<キャスト・スタッフ>
出演:天羽道子、五十風逸美、池田恵美子、伊藤真美、川嶋みどり、倉沢愛子、胡桃澤伸、小島美里、沢田貴志、徳田安春、西山勝夫、本田宏、宮子あずさ、吉中丈志
協力:「戦争と医の倫理」の検証を進める会 企画:伊藤真美 プロデューサー:山上徹二郎 撮影:辻智彦、伊東尚輝 撮影助手:小林沙優 整音:永濱清二 カラーグレーディング:辻智彦 音楽:田中教順 編集協力・パンフレット制作:世良田律子 宣伝デザイン:秋山京子 監督・撮影・編集:山本草介 共同製作:安全保障関連法に反対する医療・介護・福祉関係者の会、シグロ
[2025年/77 分/ドキュメンタリー]
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