エンディングがすごい。いろんな伏線が収束されて、また新たなカタルシスへと突入していくような感じだ。この兄弟愛の濃さ、ロマンティシズムを、一人っ子である私が実感できるときは永遠に来ないのかもしれないが、そのぶん、あらんかぎりの想像力を動員して、自分はこの結末に向かい合った。

兄のジーハン、弟のジージエの物語。兄はフェンシングの実力ある選手だったが、対戦相手を刺殺してしまったために7年間も少年刑務所に入っていた。ジージエにとっては「いいお兄さん」なのだが、母はジーハンと距離をおいていて、からっきし信用していない。そしてジージエに、兄がいかに冷酷な人物であったかを吹き込む。とはいえ相変わらずジージエにとっては「いいお兄さん」なのだが、兄には「息をするようにウソをつく」ところもあった。そして多くの人が騙されていた。
「あれは事故なんだ」という兄の言葉を得て、ジージエはフェンシングの指導を受けるようになる。もちろん母は反対し、ジーハンとの交流にも難色を示した。だが、たったひとりの兄なのだ。が、その信頼が、どんどん崩れていく。ここから作品のミステリー的要素はぐっと濃くなり、唖然とするエンディングまで一気に見る者を引っ張っていく。わかりやすさ、陰影の深さ、そして50年代の米国ロックンロールの楽曲を用いたサウンドトラック、どれもが強い印象を残す傑作だ。監督のネリシア・ロウはフェンシング代表として活躍した異色の経歴を持つらしく、さらに台湾で実際に起きた事件や監督の兄弟関係にも着想を得て、この一本を仕上げたという。兄弟役にはリウ・シウフーとツァオ・ヨウニンが扮する。
映画『ピアス 刺心』
12月5日(金) 新宿武蔵野館、ヒューマントラストシネマ有楽町 ほか全国順次公開
監督・脚本:ネリシア・ロウ
配給:インターフィルム
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