映画『これからの私たち – All Shall Be Well』、薄い人情、突き破れない現実。アジア・クィア映画界を牽引するレイ・ヨン監督の話題作

 「アジア」「現実」、その2つのワードが太字になって、こちらの眼前に迫ってくる印象を受けた。

 舞台は香港。前半で描かれている「私たち」は、パットとアンジーという女性カップルであると感じた。同性婚はまだ認められていないけれど、ふたりはもちろん仲良し、周りもそれを温かに見守っているように見える。その先には希望しかなく、新しいビジネスを始めようという意欲もあった。が、志半ばにして、パットが急死する。

 以降の「私たち」は、混じりあわない「アンジー」と「その他の人々」を描いているようにも思われる。愛する人を失えば誰もが深い悲しみにおそわれる。が、アンジーには、それとは別の悲しさ・苦しさもやってきた。パットの親族(異性婚である)の態度が、冷淡になっていくのだ。香港の法律では親族がパットの遺産を相続する。だがアンジーはパットとの思い出が詰まったマンションで残りの人生を送りたいのだ。が、もうパットの遺族にはアンジーとの交流を続ける意味もなく、もっと俯瞰して見れば、この時点でアンジーのポジションは「恋人に先立たれた、レズビアンの孤独なおばあちゃん」になってしまった。

 ベルリン映画祭で、LGBTQをテーマにした優れた作品に贈られるテディ賞を受賞した一作。「俺は、私は、異性愛だし」というひとも、住宅不足、就職難、経済格差、孤独な余生などが描かれているとなると、決してひとごとではないだろう。こんな世界で「アジア人として生きていくには?」と問いを投げかけられているようにも感じた。監督はレイ・ヨン、アンジー役はパトラ・アウ、パット役はマギー・リー(約30年以上ぶりの映画復帰であるという)、パットの姪役はフィッシュ・リウ。

映画『これからの私たち – All Shall Be Well』

12月13日よりシアター・イメージフォーラムほか全国順次公開

監督・脚本:レイ・ヨン(楊曜愷)
出演:パトラ・アウ、マギー・リー、タイポー、ホイ・ソウイン、フィッシュ・リウ
2024年 / 香港 / 広東語 / 93分 / 2.35:1 / カラー / 5.1ch / 映倫区分「G」 / 原題:從今以後 / 英題:All Shall Be Well
協力:大阪アジアン映画祭、パレットーク、Marriage For All Japan – 結婚の自由をすべての人に 字幕翻訳:新田理恵 配給:Foggy
(C)2023 Mise_en_Scene_filmproduction

公式サイト
https://movie.foggycinema.com/korekarano/