青春の焦燥を、湿気もしっかりと含みつつも結果的に爽やかに描いた一作という感を受けた。2018年から連載中の人気マンガ(原作:桜井のりお)を基にした、TVアニメシリーズの再編集版だ。

主役は、ふたりの中学生。市川京太郎は陰キャ男子でクライム・ノベルを持ち歩いている。他人とのコミュニケーションには難しさを感じているが、山田杏奈に寄せる気持ちが、「好意」であることは、わかってきた。というのも、それまでの自分や、周りのひとたちに対してはネガティヴな気持ちにしかならなかったのに、山田のことを考えるとなんだか胸がうずくからだ。が、心のどこかで、こんな俺を認知すらしてくれることはないだろうという気持ちもある。
山田杏奈はスタイル抜群の美少女キャラであるとはいえ、「かわいい」より「おもしろい」といわれるほうを好み、お菓子をボリボリ食い、性格的には裏表がなく、つまり「この人の前ではこうしておかないと」みたいな外ヅラにおける打算を持たない。他人に対する接し方が、すがすがしいまでに実直だ。雑誌モデルとしての活動もしていて、よく目立ち、よくモテる。チャラい先輩からも告白されるのだが、どういうわけか、そうした誘いには乗らない。しかし、市川に好意を持っている。
「まさか俺が」という自己肯定感の低い市川と、まっすぐ「市川が好き」な人気者の山田が、いかに会話を弾ませ、心を近づけていくか、その、時にじれったくなるほどの展開もまじえた描写がまぶしい。残念ながら私はもう二度とこの年齢に戻ることがないし、こういう体験とも縁がないと思うと、なんだかとても寂しくなったが、鑑賞中、我が「青春成分」は間違いなく上昇していた。心を甘酸っぱく潤したい方に、世代を超えてお勧めしたい。TVでは描かれなかった市川の姉の、とあるシーンも物語の良きスパイスとなっている。
ヨルシカ、コハナラム、あたらよといった注目のアーティストによる歌の数々も、これ以上ないほど映画と合う。
劇場版『僕の心のヤバイやつ』
2026年2月13日(金)全国公開
【スタッフ】
原作:桜井のりお(秋田書店「チャンピオンクロス」連載)
総監督:赤城博昭
監督:陳達理
脚本:花田十輝
キャラクターデザイン:勝又聖人
色彩設計:柳澤久美子
美術監督:黛昌樹
撮影監督:峰岸健太郎 竹沢裕一
編集:肥田文
音響監督:小沼則義
音響制作:ビットグルーヴプロモーション
音楽:牛尾憲輔
制作:シンエイ動画
製作:僕ヤバ製作委員会
配給:東映 エイベックス・ピクチャーズ
(C)桜井のりお(秋田書店)/僕ヤバ製作委員会
【キャスト】
市川京太郎:堀江瞬
山田杏奈:羊宮妃那
制作年:2025年
上映時間:101分