「mole」という英単語を辞書で調べるとモグラ、ほくろ、あざ、スパイなどの語句が出てくる。10月15日より東京・シネマート新宿、大阪・シネマート心斎橋ほか全国順次ロードショーされる『THE MOLE(ザ・モール)』で描かれるのは、ずばり、スパイの世界。しかもフィクションではなく、ドキュメンタリーなのであるから、見ているこちらの緊張感も高まるばかりだ。
中心人物はデンマーク出身の元料理人。あれよあれよという間に彼は(このあたりはぜひ本編で確認してほしい)、CIAさえ容易に情報をつかめないと言われている北朝鮮の国際的な闇取引のネットワークに潜り込む。上映時間は約120分。北朝鮮、カンボジア、ヨルダン、デンマーク、スウェーデン、スペイン、イギリス、ウガンダ、シリアなどを舞台にした、すさまじい腹の探り合いを含む、桁外れのディールに向かっての猛烈なやりとり描かれる。
『誰がハマーショルドを殺したか』で知られる、北朝鮮とも因縁のある(理由は後述)マッツ・ブリュガーが監督としてクレジットされているが、彼自身も「100%ノンフィクションだ」と言い切っているほどの、リアリティいっぱいの作品だ。あらゆることがネタバレにつながりそうな内容ゆえ詳細は伏せるが、個人的には「ストーン・フェイス」と外で呼ばれている、何ひとつ表情を変えぬアジア人の男がむしょうに怖かった。
11月27日には、ブリュガー監督が北朝鮮を怒らせるきっかけとなった『ザ・レッド・チャペル』も公開予定。これから寒くなっていく季節に、あえて背筋が凍るような体験を映画から味わってみるのも一興だ。
映画『THE MOLE(ザ・モール)』
10月15日(金) シネマート新宿、シネマート心斎橋ほか 全国順次公開
出演:ウルリク・ラーセン
監督:マッツ・ブリュガー(『誰がハマーショルドを殺したか』)
原題:「THE MOLE UNDERCOVER IN NORTH KOREA」
協力:NHKエンタープライズ
配給:ツイン
2020年/ノルウェー、デンマーク、イギリス、スウェーデン/135分/DCP/映倫区分G
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