「世界を変える30歳未満の30人」に選出された才媛が、実の母とコンビを組んだ初長編監督映画『エル プラネタ』

 アルゼンチン生まれのスペイン育ち、英国ファッションの名門校“セントラル・セント・マーチンズ”を経て、現在は米国ロサンゼルスを拠点にする才人がアマリア・ウルマン。1月14日(金)から渋谷WHITE CINE QUINTO、新宿シネマカリテほか全国順次公開される『エル プラネタ』は、彼女自身が監督・脚本・主演・プロデュース・衣装デザインを務める初長編映画で、サンダンス国際映画祭でも大きな話題を集めた。

 舞台はスペイン北部の海岸都市・ヒホン。画面はほぼモノクロで綴られる。主な登場人物はアマリアとその母にあたるアレ・ウルマン。つまり実際の親子が親子役を演じているのだ。アマリアはロンドン帰りのスタイリスト“レオ”を演じる。

 実際の親子が、この映画で描かれているように経済的にちっとも恵まれていない状態にもかかわらず“、SNS映え”を目指して表面だけは華麗に着飾ろうとし、さらに母親がすさまじい猫グッズ好き(実際の猫は出てこない)なのかは知る由もないが、「ひょっとして登場人物の心理やシチュエーションだけを共有して、アドリブでセリフのやりとりをしたかも」と思えるほどふたりのやりとりは生々しい。

 タイトルはその親子が食事をするレストランに因んでいるようだが、この場面も含めて、アマリアとアレの息のあった「見栄の張りっぷり」はなんとも面白味があり、クスリと笑わせたあとに「だけど自分にもこんなところがあるよなあ」と内省させるに充分な迫力だ。

 また、日本では高嶺の花に思われているZARA(サーラ)が本国スペインでは“ファッションセンターしまむら”的な庶民的ブランドであることも認識できる。80数分、勢いよく見ることができる一作。辛口のユーモアがキリリとした後味を残す。

映画『エル プラネタ』

1月14日(金)より、渋谷WHITE CINE QUINTO、新宿シネマカリテ 他 全国順次公開

監督・脚本・プロデュース・衣装デザイン:アマリア・ウルマン
出演:アマリア・ウルマン、アレ・ウルマン、チェン・ジョウ
音楽:chicken
配給:シンカ
提供:シンカ、シャ・ラ・ラ・カンパニー
2021年 / 82 分 / アメリカ・スペイン / 英語・スペイン語 / モノクロ / 1:1.85 / 5.1ch / 原題:EL PLANETA / 字幕翻訳 小尾恵理 /
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