宮崎県西都市で約3日間続く儀式「銀鏡神楽」に迫る、圧巻のドキュメンタリー『銀鏡 SHIROMI』

 まったく知らなかったものに接する喜びは格別だ。「銀鏡」というタイトルから銅鏡を反射的に思い浮かべ、太古の日本に思いを巡らす内容なのかなと勝手に想像しながら観始めたが、違った。宮崎県西都市の銀鏡(“しろみ”と読む)というところで500年以上前から伝承されている“星の神楽”こと「銀鏡神楽」、およびそれを舞う人々に焦点を当てた作品なのだ。

 銀鏡は、いわば限界集落の村である。毎年12月中頃に行われる「銀鏡神楽」は一大イベントであり、ここに向けて人々は力を合わせる。準備は12日の朝からはじまり、13日の夕刻に、式一番「星の舞」があり、二番から三十三番までは14日の夜8時頃から翌15日午後3時頃まで続く。とんでもないマラソン・セッションなのだ。外神屋(祭壇)にあるイノシシの生首は、神への捧げもの。九州とはいえ12月の夜の野外は寒い。それでも夜に行うのは、“闇の中に神がおりてくる”との言い伝えがあるからだ。

 開催前に「銀鏡神楽」について真剣に話し合い、細部をつめていた人々が、いざ本番になると、開放感たっぷりの表情をたたえて、「銀鏡神楽」に没頭する。まさにこの夜、確かに何かが銀鏡にはおりてきたのだ。一切の電気楽器や拡声装置を用いない音楽、舞が繰り広げられるさまは、まさに圧巻といっていい。これはぜひ現場で体験したいと思ったし、たとえばアフリカ、ブラジル、エジプト等の祭典に興味のある方や、ゴスペルに通じている方にも、なにか新鮮な視点を提供する作品なのではないかと感じた。

 監督:赤坂友昭、録音:森英司。2月19日から渋谷シアター・イメージフォーラム、ほか全国公開。

映画『銀鏡 SHIROMI』

2月19日(土)よりシアター・イメージフォーラム ほか全国順次公開

監督:赤阪友昭 撮影:古木洋平、牛久保賢二 録音:森英司 音楽:林正樹 歌:松田美緒 後援:宮崎県、西都市 製作:映画「銀鏡 SHIROMI」製作委員会 本編113分
(C)映画「銀鏡 SHIROMI」製作委員会
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