愛をもって旧弊に異議を唱える。イ・チャンドン監督も称賛した話題作『三姉妹』が日本公開

 別々に暮らして久しい三姉妹が、久しぶりに年老いた父の誕生会に集まった。それぞれが大人で、それぞれが自分の生活を持っている。だが姉妹が3人集まれば、何歳になろうが「姉」と「妹」の位置関係に変わりが生じるわけでもなく、その三姉妹にしても父のもとでは、いくら人生経験を重ねたところで、揃ってひとしく「子供」である。

 長女・ヒスクは花屋を経営、元夫がこさえた借金を返しながらロックに入れあげる娘とふたりで生活している。次女・ミヨンは熱心なキリスト教徒で清廉潔白な生活をして、一男一女にも恵まれ……だが夫は不貞行為をしていた。三女・ミオクはなかなか芽の出ない劇作家で、酒浸りの日々を送る。夫の連れ子との三人暮らしだ。

 という、実にバラエティに富んだ生活をする三姉妹がなぜ再会したのか。そこには、この三人の現在のシチュエーションが、じつにうまく奏功している。筆者は「なるほど、この展開であれば、各人がバラバラであればあるほど、“その後”が生きるのだな」と、やや俯瞰気味に見ていたが、物語が進むにつれて、三人のハーモニーは見事に整い、古い観念(年上の男性は理由なしに敬うべき、的な)から脱皮しようとする概念などおそらく1ミリも持ち合わせていないであろう父親に毅然と対応していく。

 でも三人はおそらく、父親のことが本当に大好きなのだ——–。監督・脚本イ・スンウォン、6月17日よりヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館ほか全国順次公開。

映画『三姉妹』

6月17日(金)よりヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館ほか全国順次ロードショー!

出演:ムン・ソリ、キム・ソニョン、チャン・ユンジュ、チョ・ハンチョル
監督・脚本:イ・スンウォン 製作:キム・サンス、ムン・ソリ 音楽:パク・キホン 配給:ザジフィルムズ
2020年 /韓国 /韓国語 /2.00:1/カラー (一部モノクロ)/5.1ch/115分 /字幕翻訳:中西美絵
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