「クライム・サスペンス」でもあり、「バディもの」でもあり。いまどき、珍しいほどの「男くささ」に引き込まれる『警官の血』

 じっとりとした、重く湿っぽいほどの手応えを感じさせる「サスペンス」であり、さわやかなまでに「バディもの」だ。もちろん基本的にはクライム・サスペンスなので「真の悪者さがし」に関心が向かいがちになってしまうけれど、それにこだわりすぎると木ばかり見て森を見ないことになってしまう。認め合う男の美しさもまた、この映画が大きく描きたかったところなのだろう。

 ヒットした佐々木譲の同名警察小説の映画化でもあるそうだが、筆者は未読なので原作と比較することはできない。ただ筋書きはひじょうにキャッチーで、韓国の大都会の朝昼夜をなめまわすように捉えたカメラ・ワークは実に刺激的だ。

 実質的な主人公は、新人刑事のチェ・ミンジェ。彼の父親は警官で、ある悲惨な事件に巻き込まれて殉職している。若い頃、この警官の下についていたのがパク・ガンユンという男。いまは敏腕刑事として名を馳せているが、なにしろお金の出入が派手で、裏社会と親密にやっているのではという噂も後をたたない。上司からの命令で、ミンジェはガンユンの内偵捜査(スパイ)を行うことになる。さあ、ここからが「ハラハラ」の始まりである。

 ミンジェを演じるのは『パラサイト 半地下の家族』にも登場したチェ・ウシク、ガンユンを演じるのはチョ・ジヌン。監督はイ・ギュマン。

映画『警官の血』

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原作:佐々木譲『警官の血』(新潮文庫刊)
監督:イ・ギュマン
出演:チョ・ジヌン、チェ・ウシク、パク・ヒスン、クォン・ユル、パク・ミョンフン
2022年/韓国/119分/シネマスコープ/5.1ch/英題:The Policeman’s Lineage/字幕翻訳:福留 友子/PG-12
配給:クロックワークス
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公式HP
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