この出来事は「対岸の火事」ではない! 世界的記者がつきつける「悲劇の現実」を描く『戦場記者』

 「ボーン・上田記念国際記者賞」受賞者にしてTBSテレビ特派員(JNN中東支局長)である、須賀川拓を追った一作。彼は中東、ヨーロッパ、アフリカ、西アジアなど各地を飛び回り、YouTubeを含めて情報を発信し続けており、この映画ではパレスチナのガザ、イスラエル、アフガニスタン、ウクライナ、チョルノービリ原発などで命がけの取材をおこなう姿がクローズアップされる。

 たとえば、どんな服装でいくのか、どんな装置を持ち歩くべきなのか、頭やからだを防御するためにどうしているのかなども、この映画を見ればわかる。須賀川は“庶民”(ずばり、爆弾を落とされる側だ)と積極的に会話し、情報を収集し、こちら(日本で画面を見る側)に向けて、いまここがどういう状態なのかを客観的に説明する。それがとてもわかりやすい。自分(原田)はエンタテインメント分野の記者であるが、「第三者に伝える」という点が大事なのは同じこと。簡潔に説明するのは当たり前のことだとしても、物事を深く調べ、会得し、それを消化したうえでなければ、けっして「第三者にわかりやすく伝える」ことなどできない。果たして自分はそれが十全にできているだろうかと、須賀川のふるまいを見て、ひじょうに身の引き締まる思いがした。

 紛争の場面に関しては、あえて何も書かない。当然ながら目をそむけたくなるところもある。とても汚い川沿いにある「麻薬窟」のような場所のシーンも、撮影は晴れた昼間だというのに、おぞましさを感じさせるに充分だった。人間の目というのは、あそこまで生気を失うことができるものなのか。監督は須賀川自身が務めている。12月16日から角川シネマ有楽町ほか全国順次公開。

映画『戦場記者』

12月16日(金) 角川シネマ有楽町ほか全国順次公開

監督:須賀川拓 撮影:寺島尚彦 宮田雄斗 渡辺琢也 市川正峻 協力ディレクター:小松原茂幸 編集:牧之瀬勇人 泉妻康周 MA:深澤慎也 選曲・サウンドデザイン:御園雅也 企画・エグゼクティブプロデューサー:大久保竜 チーフプロデューサー:松原由昌 プロデューサー:津村有紀 TBS DOCS事務局:富岡裕一 協力プロデューサー:石山成人 塩沢葉子 製作:TBSテレビ 配給:KADOKAWA 宣伝:KICCORIT
2022年/日本/102分/5.1ch/16:9
(C)TBSテレビ

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