友情も家族愛もぶち壊す、それが戦争。41冠に輝く作品が日本上陸。『世界が引き裂かれる時』公開へ

 世界各国で41冠の栄誉に輝いたという、いわくつきの作品『世界が引き裂かれる時』が6月17日よりシアター・イメージフォーラムほかで全国公開される。なぜ、“いわくつき”か。2014年にウクライナのドネツク州で起こったマレーシア航空17便撃墜事件を背景とする内容であること、ロシアのウクライナ侵攻直前の2022年1月に第38回サンダンス映画祭ワールドシネマ部門の監督賞を受賞、さらに第72回ベルリン国際映画祭でパノラマ部門エキュメニカル賞、第95回アカデミー賞最優秀国際長編映画賞ウクライナ代表に選出されるなどの経緯があるからだ。それがついに、日本に上陸する。

 ウクライナとロシアの国境地帯の小さな家で、つつましく暮らしている夫婦が主人公。妻は妊娠しており、出産を楽しみにしている。が、突如、家に大きな穴があき、「戦争の色」におおわれてゆく。そこで問われるのが夫の立ち位置だ。親しくしていた友人までもが「俺は親ロシア分離主義者だ。お前はどうなんだ?」的な態度で接するようになってゆく。友情ではなくて、セクトで人間関係を決めてゆく怖ろしさ。「妻の伴侶であること」「生まれ来る子供の父であること」と、「セクトを明確にすること」「戦争すること」を天秤にかけざるを得なくなる夫の苦悩。

 海外公開当初から評判になっていた「圧巻のラスト15分」に関しては、「観てください」というしかないだろう。生と死が向き合いながら、画面を見ている我々に問いをつきつけてくる。その問いは決して答えの出るものではないかもしれない、が、この世の中で考えてみるべきことのひとつが、この15分にはある。監督はウクライナ出身のマリナ・エル・ゴルバチ。

映画『世界が引き裂かれる時』

6月17日(土)よりシアター・イメージフォーラムほか全国順次開

監督・脚本:マリナ・エル・ゴルバチ
撮影:スヴャトスラフ・ブラコフスキー
音楽:ズヴィアド・ムゲブリー
出演:オクサナ・チャルカシナ、セルゲイ・シャドリン、オレグ・シチェルビナ
配給:アンプラグド
宣伝:スリーピン
日本語字幕:岩辺いずみ
2022/ウクライナ・トルコ/原題:KLONDIKE/ウクライナ語・ロシア語・チェチェン語・オランダ語/100分/カラー/DCP/ワイドスクリーン/5.1ch

公式サイト
https://unpfilm.com/sekaiga/#modal