『死ぬことは、生きること』をテーマにした「不謹慎エンターテイメント」が遂に全国公開。『カオルの葬式』

 スペインやシンガポールからもやってきたスタッフと制作し、ニューヨークでも上映されて喝采を浴びたという一作。さてはどんなグローバルな内容なのかと思ってみたが、これが実は相当に「ローカル」かつ「トラディショナル」なモチーフ。そこに生きている者ならばいつか直面しなければならない問題「死」をぶつけてきて、なんとも新鮮なブレンドを生み出す。ちなみに、先ほど「ローカル」かつ「トラディショナル」と触れたのは、岡山県の独特の葬儀(風習)が描かれているから。これがまた物語にエキゾティックな感触を与えている。

 亡くなった「カオル」について、脚本家であったとか、いくつかのことを除いてつまびらかにされていないのも、この場合はプラスとなった。観る者それぞれが、映画のふしぶしから与えられる情報をもとに、自分なりのカオル像をつくりだしていけばいいのだ。そしてカオルは、みずからの葬式のプロデュース的なものもおこなってから旅立った。生きる者(残された者)の戸惑いはしっかり描かれていて、それは時にクスリとした笑いを呼び起こす。

 私はカオルの元夫に最も共感したが、なんというか、人間味たっぷりのキャラクターが揃っているのも、内容をとてもキャッチーなものにしている。いいかえればコメディとして地に足のついたものにしている。カオル役は一木香乃、元夫役は関幸治、一人娘・カオル役(同じ名前である)に新津ちせ、ほか原田大二郎、黒沢あすか、足立智充なども登場。監督は、数々のドラマ演出・プロデュースを手がけてきた湯浅典子。

映画『カオルの葬式』

11月22日より新宿武蔵野館 ほか全国順次ロードショー

●キャスト
関 幸治 一木香乃 新津ちせ
足立智充 田中モエ 滝沢めぐみ 川島潤哉 蔵本康文 木村知貴 大岩主弥 錫木うり

●スタッフ
プロデューサー:シモエダミカ アソシエイトプロデューサー:福武 孝之 脚本:西 貴人 監督・共同脚本・プロデューサー:湯浅典子 音楽:ジョアン・ビラ 共同プロデューサー:江部 亮 ジャスティン・デイメン 久松 猛朗 撮影監督:ビクター・カタラ 照明:ポール・ピーティクス 録音・整音:紫藤 佑弥 サウンド・エディター:ギエルモ・ルーファス オフライン編集:マルク・ミチャ 河村信二 カラリスト:デイヴィッド・アヴェシラ 美術装飾:遠藤雄一郎 ヘアメイク:平林純子 スタイリスト:天野泰葉 製作/制作プロダクション:PKFP PARTNERS 配給:ムービー・アクト・プロジェクト
(C)PKFP PARTNERS LLC.

公式サイト
https://yuasan1203.wixsite.com/pkfppartners