「毎年、千億もの服が作られ、その5分の3が購入した年に捨てられる」、「ファッション産業を“1つの国”にたとえると、その二酸化炭素排出量は中国・アメリカについで世界第3位」。
そうなのか、知らなかった。そもそも服について考えたことなど、ほとんどなかった。これだけで自分にとって、この映画は大きな「知」である。さらに、服はどうやってできるのか、どのくらいの水の量が必要なのか、安く売られている服の「安さ」は誰の犠牲の上になりたっているのか、などもわかってくる。
主人公はイギリスのブランド《Mother of Pearl》のデザイナー、エイミー・パウニー。2017年4月にVOGUEの新人賞を受賞し、10万ポンドの賞金を得た彼女が、それを元手にサステナブルなコレクション《No Frills》を立ち上げるまでの約18カ月間に迫った一作がこの映画だ。いかに地球に、環境に、人々に優しくファッションとつきあっていくか。世界の様々な国に足を運び、現地の職人たちと語り合い、交渉しながら、積み木をひとつひとつ重ねるようにして、彼女は理想を追い求めていく。
結果として《No Frills》は大きな話題を呼び、エイミーはチャールズ皇太子(現:英国王)が企画したキャンペーン・フォー・ウール10周年記念スカーフのデザインを依頼されるまでの存在となる。というわけでこの映画は期せずして彼女のサクセス・ストーリーへの道程を記録したものにもなったのだが、私が最も印象に残ったのは、エイミーのコンセプトに意気に感じたスペイン語圏の職人たち、工場主のはつらつたる姿だ。
監督はこれが長編デビュー作となるベッキー・ハトナー。トライベッカ映画祭に正式出品され、バンクーバー国際映画祭環境映画賞、グアム国際映画祭最優秀ドキュメンタリー映画賞、ベスト・フェスティバル賞などを受賞した本作は9月22日から全国公開される。
映画『ファッション・リイマジン』
9月22日(金)ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館ほか全国ロードショー
出演:エイミー・パウニー(Mother of Pearlデザイナー)、クロエ・マークス、ペドロ・オテギ
監督:ベッキー・ハトナー
2022年/イギリス/英語/カラー/ビスタ/100分/日本語字幕:古田由紀子/原題:Fashion Reimagined
配給:フラッグ 宣伝:フラニー&Co. 映倫区分:G
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