1830年のパリを描いた物語が、コロナ禍の現代ニューヨークにおりてくる。必見・異色の傑作『ラ・ボエーム ニューヨーク愛の歌』

 こんなアイデアがあったのかと、驚きつつ観終えた。

 ベースとなっているのは、19世紀イタリアの作曲家、ジャコモ・プッチーニのオペラ『ラ・ボエーム』。その舞台をコロナ禍の現代ニューヨークにおきかえ、物語は進む。よって登場人物にはアジア系もアフリカ系も登場し、ファッションもヒップホップ系、メタル系などさまざま。しかし言葉はすべてイタリア語による歌唱で綴られ(いわゆる「セリフ」はないといっていい)、楽曲に、たとえば現代ポピュラー・ミュージック的なアレンジが加えられることもない。ある意味、突飛である。想像してほしい、ニューヨークのチャイナタウンの雑踏で、様々な肌の色を持った人物が、オペラを歌いながら、物語を進めていく図を。だが、これが異色の味わいというか、見ているうちにハマってくる。1830年代のパリを題材にしたはずのクラシカルな物語が、現代ニューヨークとシンクロしていく。そして貧困、格差といった問題が、少しも変わることのないリアリティとして生き続けていることを識る。

 出演者には、中心人物であるビジョー・チャンのほか、シャン・ズウェン、ラリサ・マルティネス、ルイス・アレハンドロ・オロスコ、井上秀則、マルケル・リード(テレンス・ブランチャードの作品にも参加経験あり)、アンソニー・ロス・コスタンゾ、イ・ヤン等、実際にクラシック界で活動する気鋭たちが選ばれている。監督はレイン・レトマー、音楽監督はショーン・ケリー。

映画『ラ・ボエーム ニューヨーク愛の歌』

10月6日(金)よりTOHOシネマズシャンテほか全国公開

配給:シネメディア、フラニー&Co.
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公式サイト
https://la-boheme.jp/index.html