気鋭監督が抽象の美を表現。ドイツの映画祭にもエントリーした三部構成のSF作品『JOURNEY』

 全3部で構成されたSF作品。徹底的にアブストラクト(抽象的)だ。「ここがこうだから、こうなって、こうなるんだろうな」的なこざかしい組み立てをしながら観ることなど一切忘れて、画面、セリフ、表情に浸るに限る。観る人の感慨の数だけ正解が存在する作品なのではないか、そんな思いもよぎった。

 ホームページのStory欄には、こうある。「肉体から意識を解放することが可能となった近未来。宇宙飛行士になることを諦め地球で働く慶次は、心を病む妻の静と暮らしていた。ある日、慶次は新た宇宙開発についての噂を聞き、静は意識のみの存在に憧れを抱くようになる」。私は近未来にも「愛(信頼)」が存在すること、「噂」によって人心が動くことに、ほっとした。「意識のみの存在」とはなんなのか、という疑問も、話の進行によって解消されてゆく。

 スタンリー・キューブリック監督の『2001年宇宙の旅』やリドリー・スコット監督の『ブレードランナー』を自身の映画の原点とする若手監督、霧生笙吾による第一弾。「SKIPシティアワード賞2022」や、欧州最大の日本映画祭であるドイツ「ニッポン・コネクション」(2023年)にエントリーした一作だが、10月21日からの、池袋シネマ・ロサでの初の劇場公開にあたり、霧生監督自ら“ファイナル・カット版”と題して再編集をほどこした。絵画から飛び出したような色彩、艶のある音響が印象的だ。

映画『JOURNEY』

10月21日(土)より池袋 シネマ・ロサにて限定劇場公開

【キャスト】宮﨑良太、伊藤梢、森山翔悟、みやたに、山村ひびき、廣田直己
【スタッフ】脚本・監督・編集:霧生笙吾 撮影:蔡融霖 照明:奥田夏輝/林崎征大 録音:井口暁斗 美術:成田大喜 整音:鈴木昭彦 宣伝デザイン:富永諒 宣伝:滝澤令央 宣伝協力:武蔵野美術大学 配給:Cinemago 劇中曲|ピアノ曲「愛の夢(三つの夜想曲)第三番・変イ長調『おお、愛しうる限り愛せ』
2023|日本|カラー|シネスコ|DCP|60分
(C)JOURNEY 2023/Cinemago

公式サイト
https://www.cine-mago.com/journey