「現代」の姿、「人間」というもののリアリティをつきつけられたような気分になる。
主人公の女性・ムンジョンは、韓国で“半地下”よりも底辺の住居“とされるビニールハウスで暮らしている。息子は少年院にいて、母は認知症を患っている。出所の近づく息子と一緒に暮らすための資金を得るために、老夫婦の訪問介護士をつとめているが、その夫・テガンは目が見えず、妻・ファオクは妄想にとらわれていて暴力的。見境なく挑みかかってくるのだが、そのときにムンジョンがとった咄嗟の防御でファオクは即死した。が、ここで自分が「殺人犯」になるわけにはいかないとばかりに、ムンジョンは自分の母を連れてきて「ファオク」の身代わりとする。この段階でもう、スリルとサスペンスは限りなく充満し、「殺人犯・母親・娘・介護士（知的な職業）」をゆらめくムンジョンのやるせなさに、こちらもヘヴィーな気持ちになりながら、一度見たらしばらく脳裏から離れられないであろうラストシーンへと導かれてゆく。
ムンジョン役にはキム・ソヒョンが扮し、ほかヤン・ジェソン、アン・ソヨらも登場。監督のイ・ソルヒはこれが長編デビューだという。またソヒョンはこの映画で6つの主演女優賞を獲得した。
映画『ビニールハウス』
3月15日(金)よりシネマート新宿、ヒューマントラストシネマ渋谷、ヒューマントラストシネマ有楽町、アップリンク吉祥
監督・脚本・編集：イ・ソルヒ
出演：キム・ソヒョン、ヤン・ジェソン、シン・ヨンスク、ウォン・ミウォン、アン・ソヨ
2022年／韓国／韓国語／100分／カラー／2.39:1／5.1ch／字幕：大塚毅彦／配給：ミモザフィルムズ
（C）2022 KOREAN FILM COUNCIL. ALL RIGHTS RESERVED