映画『おくびょう鳥が歌うほうへ』、ひとりの女性の“再生の物語”を、ベルリン銀熊賞受賞監督が映画化

 イギリスでベストセラーとなったという原作「The Outrun」(エイミー・リプトロットの回想録)の映画化。監督と脚本をノラ・フィングシャイト(『システム・クラッシャー』でベルリン国際映画祭銀熊賞受賞)が手がけ、シアーシャ・ローナンは主演のロナ役を務めるとともに、初のプロデュース業もおこなった。つまり、それほどまでに自身で映画化したかったということなのだろう。

 ロナは29歳。大都会ロンドンの大学院で生物学を学んでいたというから、相当に優秀な頭脳の持ち主だったようだが、なんというか、生活は、自堕落なほうへ自堕落なほうへと流れてゆくところがあった。このままではいけないと思いながらも、ズルズルと日々を過ごしているところがあった。が、これではいけないということなのだろう、10年ぶりに故郷へ戻る。場所はスコットランド・オークニー諸島。自然がいっぱい、といえばきこえはいいが、いうまでもなく自然は厳しいし人間には媚びないから、ロナもさまざまな厳しさに直面する。恋人ともうまくいかず、故郷は彼女が知る昔の故郷とは同一ではなかった。

 ふと気が付くと、酒に飲まれた日々の復活だ。こうなると、是が非でも必要となるのが周りの人物たちからのケアである。それに恵まれるか恵まれないかで、破滅することもあるし立ち直ることもある。

 私は喫煙やアルコールと縁がないし堕落する時間があるなら1冊でも本を読み1枚でもレコードを聴きたいと思う者なので、「そうした習慣(依存)からの脱却」は正直言って距離感がつかみにくい。が、「立ち直る時の苦しみ」「(それから離れたい)気持ちと(それを求める)気持ちの乖離」は人間にとって共通のテーマであろう。それを疑似体験できるのは、たしかに映画の良さである。

映画『おくびょう鳥が歌うほうへ』

2026年1月9日(金)より 新宿ピカデリー ほか全国順次公開

監督:ノラ・フィングシャイト
主演:シアーシャ・ローナン、パーパ・エッシードゥ
提供:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
配給:東映ビデオ
【2024年/イギリス・ドイツ/原題:THE OUTRUN/シネマスコープ/118分/映倫区分:G】

公式サイト
https://www.outrun2026.com/