「国(世界)からの期待」と「自分以外誰もそこにはいないという、文字通りの孤独」のド真ん中にいる若者が、その両方から強く腕を引っ張られながら、それでも最善を尽くそうと奮闘している物語、との印象を受けた。長時間、ハラハラさせられっぱなしだし、いろんな難関に出会う主人公に接するごとに「うまくいってほしい」との願いが沸き起こる。
韓国はかつて、有人ロケットを月に送り込もうとしていた。が、ロケットは爆発事故を起こし、責任者も組織を去った。それから5年、韓国は満を持して「有人ロケット ウリ号」を送り出す。クルーたちはこのためにすさまじいトレーニングに耐え、技術陣もベストを尽くした。クルーは3人。だが通信トラブルが発生し、2人が事故死する。一人生き残ったのが、新人飛行士のソヌ。彼は月に到着できるのか、無事に地球に戻れるのか、ロケットは大丈夫なのか、地球との交信は保たれるのか。さまざまな「ひっかかり」を観る者に与えながら、物語は雄大に展開していく。
途中からは「かつての事故で組織を去った責任者」ジェグクが宇宙センターに呼び出され、自らが知るあらゆる知識・経験を導入してソヌの「遠隔救助」にあたる。だが当然、以前の事故でジェグクに悪印象を持っている者もあり、さらに政治や国同士の思惑やNASAの事情なども絡んできて、濃厚な人間模様も目にしながら、我々は限りなく規模の大きな「救出劇」の場に立ち会うことになる。画像も音響も迫力満点だ。監督・脚本キム・ヨンファ、ソヌ役はド・ギョンス、ジェグク役はソル・ギョング。
映画『THE MOON』
7月5日(金) 新宿バルト9 ほか全国ロードショー
監督:キム・ヨンファ
出演:ソル・ギョング、ド・ギョンス、キム・ヒエ
2023年|韓国|韓国語・英語|129分|カラー|ビスタ|5.1ch|字幕翻訳:根本理恵|字幕監修:柳川孝二|映倫:G|配給:クロックワークス
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