ママに自作のパイを食べて欲しいだけなのに、卵1つ手に入れるだけで危機一髪状態になるとは……。『リトル・ワンダーズ』

 愉快でスリリングな「子ども映画」だ。『グーニーズ』『スパイキッズ』『ムーンライズ・キングダム』『ロッタちゃん』シリーズのファンにもおすすめとのことだが、それもわかる。もっともロッタちゃんのようにやたらめったら怒ったり叫んだり蹴りを入れたり、パンクな行動に出ることはないが、一瞬一瞬を真剣に生きる子供のまじめさ(と、それゆえに起こる滑稽さ)が巧みに描かれている。

 子どもたちの願いはただひとつ、「大好きなママに、自分たちの作ったブルーベリーパイを食べてほしい」ということ。だから作るのに一所懸命になるのだが、あろうことか卵がなかった。私は日本人であるせいか「へえー、パイには卵がいるのか」と新発見をしたような気分になったが、子どもたちの表情や行動を見る限りでは、卵がないということはパイ制作のコアに関わる一大事であるようだ。そして、この映画では、彼らが体験した「卵を入手する過程で起きたさまざまな出来事」が、あっと驚くような画面&ストーリー展開のもとでつづられていく。監督のウェストン・ラズーリは本作が長編デビューになるという。

 第76回カンヌ国際映画祭では監督週間とカメラ・ドール、第48回トロント国際映画祭ミッドナイト・マッドネス部門のクロージング作品に選出されたという一作。子どもに立ち返ったような気持ちで、彼ら彼女らの冒険に寄り添ってみるのも一興であろう。16mmフィルム撮影による色合いにも注目したい。

映画『リトル・ワンダーズ』

10月25日(金)より新宿武蔵野館ほか全国公開

脚本・監督・製作:ウェストン・ラズーリ
出演:リオ・ティプトン、チャールズ・ハルフォード、スカイラー・ピーターズ、フィービー・フェロ、ローレライ・モート、チャーリー・ストーバー
2023年|アメリカ|5.1ch|シネマスコープ|英語|114分|原題:RIDDLE OF FIRE|字幕翻訳:髙橋彩|配給:クロックワークス|PG12
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公式サイト
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