アフリカ系が「白雪姫」や「シンデレラ」になってはいけないのか? “イエロー”の我々はどう感じるか? 『ネネ -エトワールに憧れて-』

 主人公の“ネネ”は、パリ郊外の団地で育った12歳の少女。この映画コーナーでも何回か触れた“バンリュー”の住民かもしれない。つまり彼女の住む「パリ」の空の下には、セーヌ川は流れていない。

 とにかくダンスが大好きで、そのダンサーがどんな肌をしていようと良いと感じるものには敬意を寄せて、そのダンスがヨーロッパを源流とするものであっても、アフリカン・アメリカン・カルチャーを源流とするものであっても、良いと思えば等しく愛する。彼女はバレエに敬意を抱いているから、パリ・オペラ座のバレエ学校の入学試験を受けた。試験を受けること自体に肌の色は関係ないからだ。

 そして彼女は、傑出した踊りっぷりによって合格した。だが憧れている、パリ・オペラ座の最高位“エトワール”への道は遠い。同じ人間としてうちとけてくれる生徒もいたが、皆がそうというわけではなく、人種差別的シーンも(おそらく相当な配慮をしたうえで)描かれている。ネネも白いパウダーを皮膚に塗ったり、「白人に生まれてきたかった」(そうであればこんなつらい思いはしなかったであろうに、というニュアンスであろう)とブチ切れたりもする。見ていてつらくなる描写だ。役柄を演じているとはいえ、俳優の心は張り裂けんばかりだったのではないか。しかも校長マリアンヌの、ネネに対する態度がどうにも固い。それはなぜか、単なる人種偏見なのか……まるで何重にも品物をくるんだ包装紙を一枚一枚はがしていくように、マリアンヌのマインドがじっくり描かれていくところこそ、私にとってはこの映画の白眉だった。

 ネネ役はセネガル出身のオウミ・ブルーニ・ギャレル、マリアンヌ役はマイウェン、脚本・監督はラムジ・ベン・スリマン。2024年3月に横浜で開催されたフランス映画祭の正式出品作品。

映画『ネネ -エトワールに憧れて-』

11月8日より全国公開

監督・脚本:ラムジ・ベン・スリマン
撮影:アントニー・ディアス
キャスト:オウミ・ブルーニ・ギャレル、マイウェン、アイサ・マイガ、スティーヴ・ティアンチュー ほか
フランス/2023年/97分/カラー/シネマスコープ/音声5.1/フランス語
配給:イオンエンターテイメント
(C)Photos:Mika Cotellon

公式サイト
https://neneh-cinema.com/